工程管理の要点(30秒でわかる要点)
- 2大テーマ:バーチャート工程表とネットワーク工程表
- ネットワーク:クリティカルパス・フロート(余裕日数)の計算が頻出
- 第二次にも直結:ネットワーク工程表の計算は第二次検定でも出題
- 攻略:パターンは5つ程度。過去問を5問解けば解法が身につく
この分野の出題頻度
工程管理は施工管理法の中で毎年2〜3問出題されます。特にネットワーク工程表のクリティカルパスの求め方は第一次検定でも第二次検定でも出る超頻出テーマ。バーチャートの読み方もセットで押さえましょう。
工程管理とは?
結論から言います。工程管理とは、建設工事を「決められた工期内に完成させる」ための管理活動です。工事の進捗状況を把握し、遅れがあれば原因を分析して対策を打つ。そのための武器が工程表です。
建設工事では、基礎→躯体→仕上げと工程が順番に進みます。前の工程が遅れると、後ろの工程が全部ずれてしまい、最終的に工期に間に合わなくなります。工程管理はこのドミノ倒しを防ぐための仕組みなのです。
📊 出題傾向
工程管理から毎年2〜3問出題されます。特にネットワーク工程表の計算問題(クリティカルパス・フロート)は毎年出る最重要テーマ。「施工計画」で学ぶ工程計画と合わせて、施工管理法の得点源にしましょう。
2級建築施工管理技士の第一次検定では、バーチャートとネットワーク工程表の読み方・計算問題が頻出します。特にネットワーク工程表のクリティカルパスとフロート(余裕日数)は毎年のように出題される最重要テーマです。第二次検定でも工程表の記述問題が出るため(「第二次 ネットワーク工程表の解き方」参照)、ここでしっかり基礎を固めておきましょう。
なぜ複数の工程表を使い分けるのか
バーチャートは「いつ何をやるか」が一目でわかるので現場の作業員向け。ネットワーク工程表は「どの作業が遅れると全体が遅れるか」がわかるので工事全体の管理者向けです。現場では両方を併用するのが一般的。試験では「各工程表の長所・短所の比較」がよく問われます。
工程表の種類と特徴
建設現場で使われる主な工程表は4種類あります。
| 工程表 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| バーチャート(横線式) | 横棒で各作業の期間を表示。作りやすく見やすい | 全体工程の把握 |
| ネットワーク工程表 | 作業の前後関係を矢印で表示。クリティカルパスがわかる | 工期短縮・遅延対策 |
| ガントチャート(出来高曲線付) | 各作業の進捗率を表示 | 進捗管理 |
| 出来高累計曲線(Sカーブ) | 工事全体の出来高をS字カーブで表示 | 全体進捗の俯瞰 |
バーチャート工程表
バーチャートは最もポピュラーな工程表です。縦軸に作業名、横軸に日数(時間)を取り、各作業を横棒(バー)で表します。
📌 バーチャートの特徴
- メリット:作成が簡単で、各作業の開始日・終了日・所要日数がひと目でわかる
- メリット:誰が見ても直感的に理解できる。発注者への説明にも使いやすい
- デメリット:作業と作業の前後関係(依存関係)がわからない
- デメリット:どの作業が遅れると工期に影響するか(クリティカルパス)が見えない
たとえば「基礎工事:4/1〜4/20」「躯体工事:4/15〜6/30」とバーチャートに書いてあっても、基礎工事が終わらないと躯体工事に入れないのか、一部並行して進められるのかがわかりません。これがバーチャートの最大の弱点です。この弱点を補うのがネットワーク工程表です。
ネットワーク工程表の基本
ネットワーク工程表は、作業の前後関係を矢印(アロー)と結合点(ノード)で表す工程表です。この形式をアロー・ダイアグラムとも呼びます。
構成要素
矢印(アクティビティ)
作業そのものを表す。矢印の上に作業名、下に所要日数を記入する。矢印の長さは日数と無関係。
○(イベント/結合点)
作業の開始点・終了点を表す丸(ノード)。番号を振って区別する。ある結合点から次の結合点へ矢印を引く。
点線矢印(ダミー)
作業の前後関係だけを示す仮想の矢印。所要日数は0日。作業の依存関係を正しく表すために使う。
ネットワーク工程表のルール
📌 作成ルール(試験で問われる!)
- 矢印の向きは左から右(時間の流れと同じ方向)
- 2つの結合点の間に2本以上の矢印を並列に引いてはいけない(ダミーで解決)
- 矢印はループ(循環)してはいけない(作業は必ず一方向に進む)
- 結合点の番号は、矢印の始点 < 終点になるように付ける
- 開始点と終了点はそれぞれ1つだけ
クリティカルパスの求め方
クリティカルパスとは、ネットワーク工程表で「最も時間がかかる経路」のことです。この経路上の作業が1日でも遅れると、工事全体の工期が1日遅れます。逆に工期を短縮したければ、クリティカルパス上の作業を短縮するしかありません。
計算の手順
具体例で見てみましょう。以下のネットワーク工程表があるとします。
作業と所要日数:
① →(A: 4日)→ ② →(C: 6日)→ ④ →(F: 3日)→ ⑤
① →(B: 3日)→ ③ →(D: 5日)→ ④
③ →(E: 2日)→ ⑤
Step 1: すべての経路を洗い出す
- 経路1: ① → A(4) → ② → C(6) → ④ → F(3) → ⑤ = 13日
- 経路2: ① → B(3) → ③ → D(5) → ④ → F(3) → ⑤ = 11日
- 経路3: ① → B(3) → ③ → E(2) → ⑤ = 5日
Step 2: 最長の経路がクリティカルパス
最も日数が長い経路1(13日)がクリティカルパスです。この工事全体の工期は13日です。
最早開始時刻と最遅完了時刻
計算問題では、各結合点の最早開始時刻(EST)と最遅完了時刻(LFT)を求められます。
最早開始時刻(EST)
「最も早くこの結合点に到達できる時刻」。前方向に計算する(左→右)。複数の経路が合流する点では最大値を取る。
最遅完了時刻(LFT)
「工期を遅らせないために、この結合点を通過すべき最も遅い時刻」。後方向に計算する(右→左)。複数の経路が分岐する点では最小値を取る。
上の例で計算すると:
| 結合点 | EST(最早) | LFT(最遅) |
|---|---|---|
| ① | 0 | 0 |
| ② | 4 | 4 |
| ③ | 3 | 5 |
| ④ | 10 | 10 |
| ⑤ | 13 | 13 |
EST=LFTの結合点を結んだ経路がクリティカルパスです。①→②→④→⑤(EST=LFT)がクリティカルパスであることが確認できます。
フロート(余裕日数)
フロートとは、ある作業が「どれだけ遅れても工期に影響しない」かを示す余裕日数のことです。
トータルフロート(TF)
その作業が持っている全体の余裕日数。TF = 後続結合点のLFT − 先行結合点のEST − 作業日数。TF=0の作業がクリティカルパス上の作業。
フリーフロート(FF)
後続作業に影響を与えずにその作業を遅らせられる日数。FF = 後続結合点のEST − 先行結合点のEST − 作業日数。FFの範囲内なら後続作業の開始が遅れない。
上の例で作業B(①→③、3日)のフロートを計算すると:
- TF = ③のLFT(5) − ①のEST(0) − B(3) = 2日
- FF = ③のEST(3) − ①のEST(0) − B(3) = 0日
作業Bは全体としては2日の余裕がありますが、フリーフロートは0日なので、遅れると後続の作業D・Eの開始が遅れてしまいます。
⚠️ フロートの超重要ポイント
- クリティカルパス上の作業はTF=0(余裕がゼロ)
- TF>0の作業は、その日数分だけ遅れても全体工期には影響しない
- ただし、TFを使い切るとその作業もクリティカルになる
- FF≦TFの関係が常に成り立つ
工期短縮の方法
工事が遅れて工期短縮が必要になったとき、どう対処するか。これも試験で問われるテーマです。
📌 工期短縮の主な方法
- クリティカルパス上の作業を短縮:人員の増員、作業時間の延長(残業・休日出勤)、機械化による効率アップ
- 作業の並行化:前の作業が完全に終わる前に次の作業を一部開始する(ファスト・トラッキング)
- 工法の変更:乾式工法への変更(湿式は乾燥時間がかかる)、PCa(プレキャスト)部材の採用
- 注意:クリティカルパス以外の作業を短縮しても、全体工期は変わらない
実際の現場では、梅雨の長雨でコンクリート打設が予定通り進まず、工程が遅れることがよくあります。このとき「土曜日も打設する」「打設チームを2班に増やす」といった対策がクリティカルパス上の作業短縮にあたります。逆に、フロートに余裕がある内装工事を急いでも全体工期には影響しません。
なぜクリティカルパス以外を急いでも無意味なのか? たとえば全体工期13日の工事で、フロート2日の作業Bを1日短縮しても、最長経路(経路1=13日)は変わりません。工期を12日に短縮するには、経路1上の作業A・C・Fのいずれかを1日短縮する必要があります。「品質管理」とのバランスも考えながら、コストと安全を犠牲にしない短縮策を選ぶことが求められます。
出来高累計曲線(Sカーブ)
出来高累計曲線は、工事全体の進捗を1本のカーブで表す図です。横軸が工期(時間)、縦軸が出来高(累計の進捗率)。カーブがS字を描くことから「Sカーブ」と呼ばれます。
なぜS字になるかというと:
- 工事序盤:準備段階で進捗がゆっくり(カーブが緩やか)
- 工事中盤:本格施工で進捗が加速(カーブが急勾配)
- 工事終盤:仕上げ段階で再びゆっくり(カーブが緩やか)
Sカーブの予定線と実績線を比較することで、工事全体が予定通り進んでいるか、遅れているかがひと目でわかります。実績線が予定線の下にあれば遅れ、上にあれば予定より早い進捗です。
覚え方のコツ・頻出ひっかけパターン
💡 計算の覚え方
- 「EST→前方→最大」「LFT→後方→最小」:EST(Earliest=最早い)は前から計算して合流点で「一番遅いヤツを待つ」=最大値。LFT(Latest=最遅い)は後ろから計算して分岐点で「一番キツイ締切に合わせる」=最小値
- 「TFはLFT、FFはEST」:TFの公式に出てくるのはLFT、FFの公式に出てくるのはEST。TF(トータル=全体の余裕)はLFT(ギリギリの期限)、FF(フリー=自分だけの余裕)はEST(次の最早開始)を使う
- クリティカルパス=「CP」=「遅れ禁止パス」:TF=0の経路。この上の作業は1日たりとも遅れられない
⚠️ 頻出ひっかけパターン
- ❌「バーチャートでクリティカルパスがわかる」→ バーチャートではわからない。ネットワーク工程表が必要
- ❌「ESTは合流点で最小値を取る」→ ESTは最大値を取る。全部の先行作業が終わらないと次に進めない
- ❌「フリーフロートが大きい作業を短縮すると工期短縮になる」→ フロートがある作業を短縮しても工期は変わらない
- ❌「ダミーは所要日数がある」→ ダミーの所要日数は0日。前後関係だけを示す
- ❌「Sカーブの実績が予定の上にあるときは遅れている」→ 上なら進んでいる、下なら遅れ
試験で狙われるポイント
🎯 第一次検定の頻出テーマ
- バーチャートは作業の前後関係がわからないのが弱点
- ネットワーク工程表のクリティカルパス=最長経路=TF0の経路
- EST:前方計算で最大値を取る / LFT:後方計算で最小値を取る
- TF = 後続LFT − 先行EST − 作業日数
- FF = 後続EST − 先行EST − 作業日数
- 工期短縮はクリティカルパス上の作業のみが有効
- ダミーは所要日数0日で前後関係だけを示す
- Sカーブは予定線と実績線の比較で進捗管理
理解度チェック
ここまでの内容を確認してみましょう。
Q1. バーチャート工程表の特徴として、最も不適当なものはどれか。
(1)作業の開始日と終了日がわかりやすい
(2)作成が比較的容易である
(3)作業間の前後関係が明確にわかる
(4)各作業の所要日数がひと目でわかる
Q2. ネットワーク工程表のクリティカルパスに関する記述として、最も適当なものはどれか。
(1)最も所要日数が短い経路である
(2)フロートが最も大きい経路である
(3)この経路上の作業が遅れても工期に影響しない
(4)この経路上の作業のトータルフロートは0である
Q3. 工期短縮の方法として、最も効果的なものはどれか。
(1)フロートの大きい作業の人員を増やす
(2)クリティカルパス上の作業を短縮する
(3)すべての作業を均等に短縮する
(4)完了間近の作業に人員を集中する
まとめ
工程管理のポイントを整理します。
- バーチャートは見やすいが作業の前後関係がわからない
- ネットワーク工程表でクリティカルパス(最長経路・TF=0)を把握する
- ESTは前方計算で最大値、LFTは後方計算で最小値
- TFとFFの計算式を確実に覚える
- 工期短縮はクリティカルパス上の作業のみが有効
- Sカーブで全体進捗を俯瞰的に把握
「施工計画」で学んだ工程計画の実践編がこの記事です。次は「品質管理」「安全管理」に進みましょう。第二次検定での工程表の記述問題は「ネットワーク工程表の解き方(記述式)」で詳しく対策できます。法規の関連知識は「建設業法」で押さえておきましょう。
実践練習 — ミニテスト&模擬試験で腕試し
施工管理法の知識をミニテストで確認しましょう。1回5問・3分で解けます。
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