1級土木(第一次)

1級土木の工程管理|ネットワーク工程表・CP・フロート計算

1級土木の工程管理|ネットワーク工程表・CP・フロート計算

結論:ネットワーク計算は「前へ最大、後ろへ最小、余裕を引算」の3手順

工程管理は、予定日を書いた表を眺めるだけの仕事ではありません。作業の前後関係と所要日数から、最も早い時刻、工期を守れる最も遅い時刻、使える余裕を求め、実績の遅れが全体へ伝わるかを判断します。令和8年度の1級土木・第一次検定では、問題BのNo.6でネットワーク工程表のクリティカルパス、最早開始時刻、工期、遅延影響が一問にまとめて問われました。

令和8年度No.6は4つの計算結果を照合する問題

令和8年度1級土木・第一次検定の公式問題Bの図を順方向に計算すると、次の結果になります。ここでは公式図を複製せず、計算で確認できる結論を示します。

確認対象 計算結果 判断
クリティカルパス ⓪→①→②→④→⑦→⑧→⑨ 所要33日の経路
作業Iの最早開始 工事開始後18日 イベント⑦の最早時刻
全体工期 33日 終点⑨の最早時刻
作業Eが3日遅延 全体も3日遅延 Eは余裕0の経路上

同年度の公式正答肢はNo.6の不適当な記述を④としています。「Eが3日遅れると工期は2日遅れる」ではなく、Eの余裕が0なので3日分がそのまま終点へ伝わります。数字を暗記せず、以下の手順で再現してください。

問題BはNo.1〜35の全問解答

令和8年度の問題BはNo.1〜35が全問解答で、工程管理のNo.6も解答対象でした。年度が変われば図や配置は変わり得るため、受検年度の公式問題を確認します。前段の計画立案は「1級土木の施工計画」、次の管理分野は「1級土木の品質管理」へつなげてください。

工程表は知りたい情報に合わせて選ぶ

表現 読み取りやすい情報 単独では弱い情報
横線式 各作業の開始・終了、重なり 複雑な依存関係と余裕
ネットワーク式 前後関係、工期、CP、フロート 暦日上の見た目
斜線・座標式 時間と場所、反復作業の干渉 非線形な複雑作業
累計曲線 予定・実績出来高の推移 個別作業の前後関係

横棒で日程を示す表と、出来高を累計した曲線は別物です。用語は教材・基準の定義を確認し、横軸が日付か進捗率か、縦軸が作業か累計量かを見て機能を判断します。工程表を一種類で済ませず、全体説明、詳細計算、実績管理を必要に応じて組み合わせます。

矢線式ネットワークの4要素を区別する

作業

矢線で表し、時間や資源を必要とする。始点i、終点j、日数dで整理する。

イベント

作業の開始・終了を表す結合点。イベント自体は時間を消費しない。

ダミー

順序関係だけを表す所要0の矢線。実作業や資源投入ではない。

経路

始点から終点まで連続する作業列。固定日数なら最長経路が工期を決める。

矢線式では「二つの作業が同じ始点・終点を持たない」「循環させない」「前後関係を壊さない」ように作図します。ダミーは日数0でも、後続作業を開始できる条件を伝えるため、計算から消してはいけません。

順方向計算は合流点で最大値を取る

最早イベント時刻を求める順方向計算(フォワードパス)は、始点を0として左から右へ進みます。作業i→jの日数をd、始点iの最早時刻をE(i)とすると、候補はE(i)+dです。

合流点の規則:入ってくる候補の最大値

片方の先行作業が8日、もう片方が11日に終わるなら、後続作業を始められるのは11日です。早い方だけ終わっても、必要な先行作業が全部そろっていないためです。

この「前へ最大」を終点まで繰り返すと、終点の最早時刻が全体工期になります。令和8年度No.6では、イベント⑦の最早時刻が18、終点⑨が33となります。

逆方向計算は分岐点で最小値を取る

最遅イベント時刻を求める逆方向計算(バックワードパス)は、終点に順方向で求めた工期を置き、右から左へ戻ります。作業i→jの日数d、終点jの最遅時刻をL(j)とすると、候補はL(j)-dです。

分岐点の規則:出ていく候補の最小値

一つのイベントから二つの後続作業へ分かれるなら、両方の期限を守れる早い方の限界を採ります。大きい値を選ぶと、期限が厳しい方の後続作業を遅らせてしまいます。

覚え方は「前へは全先行の完了待ちだから最大、後ろへは全後続の期限を守るから最小」です。最大と最小を逆にした計算ミスを防げます。

作業の4時刻とフロートを式で求める

作業i→j、所要日数dについて、イベント時刻から次の値を求めます。

意味
EST E(i) 最も早く開始できる時刻
EFT E(i)+d 最も早く完了できる時刻
LFT L(j) 工期を守れる最も遅い完了
LST L(j)-d 工期を守れる最も遅い開始

トータルフロート(TF)=L(j)-E(i)-dです。TFは、その作業だけを遅らせたとき、他の条件が同じなら全体工期を遅らせずに使える最大余裕です。TFが0の作業を始点から終点まで連続して追うとクリティカルパスになります。

フリーフロートは後続の最早開始を守る余裕

フリーフロート(FF)=E(j)-E(i)-dです。FFは、後続作業の最早開始を遅らせずに使える余裕を表します。一般にFFはTF以下です。

  • FFの範囲内の遅れ:後続作業の最早開始へ影響しない。
  • FFを超えTF以内の遅れ:後続の最早開始は遅れるが、全体工期は守れる。
  • TFを超える遅れ:他の短縮・順序変更がなければ全体工期へ影響する。

「余裕がある」という一言だけでは、後続作業へ影響しない余裕か、全体工期までに使える余裕か分かりません。設問がどちらを聞いているか確認します。

オリジナル例題を順方向・逆方向で解く

次の例は、公式問題を転載せず計算練習用に作成した独自ネットワークです。作業のつながりは、Aの後にBとCが分岐し、B→DとC→Eが合流してFへ進む形です。

作業 接続 日数
A 0→1 4
B / C 1→2 / 1→3 5 / 3
D / E 2→4 / 3→4 4 / 7
F 4→5 2

順方向はE(0)=0、E(1)=4、E(2)=9、E(3)=7、合流点E(4)=max(9+4, 7+7)=14、E(5)=16です。したがって工期は16日、クリティカルパスはA→C→E→Fです。

逆方向はL(5)=16、L(4)=14、L(2)=10、L(3)=7、分岐点L(1)=min(10-5, 7-3)=4、L(0)=0です。BのTFは10-4-5=1日、FFは9-4-5=0日です。Bが1日遅れると後続Dの最早開始は遅れますが、D側の経路にある余裕を使うため全体工期16日は変わりません。

クリティカルパスは「最長経路」と「余裕0」の両方で確認する

すべての作業日数が固定された矢線式ネットワークでは、始点から終点までの最長経路が工期を決めます。同時に、その経路上の作業はTFが0です。経路日数の加算とフロート計算を別々に行うと検算になります。

クリティカルパスが複数ある場合もあります。そのとき一方の経路だけを短縮しても、もう一方が工期を決め続けます。工程短縮では、すべての現在のクリティカルパスに効く作業を選ぶか、各経路を同時に短縮する必要があります。

遅延影響は「遅れ−使えるTF」で一次判定する

ある作業がx日遅れ、他条件が変わらない単純な場合、全体への影響の一次判定はmax(0, x-TF)です。TFが2日の作業が3日遅れれば、余裕2日を使い切り、残る1日が全体へ伝わる可能性があります。

ただし実務では、後続の実績、資源制約、暦、休日、天候、部分着手、変更作業も反映して残工程を再計算します。令和8年度No.6のEはTF=0なので、3日遅れはそのまま3日です。「似た枝に余裕がありそう」という見た目では判断しません。

工程短縮は短縮後にネットワークを再計算する

  1. 現状を更新:実績開始・完了、残日数、変更された前後関係を入力する。
  2. 新しいCPを求める:順方向・逆方向を再計算する。
  3. 候補を比較:CP上の作業について、短縮可能日数、追加費用、品質・安全・資源を比べる。
  4. 短縮案を反映:並行化、資源再配置、施工順序・方法の見直しを関係者と確認する。
  5. もう一度計算:別経路が新たなCPになっていないか確認する。

非クリティカル作業の短縮は、その時点では全体工期を直接縮めないのが基本です。ただし、資源をCP作業へ移す、将来の遅延リスクを減らす、後続の作業可能時間を確保する目的はあり得ます。「意味がない」と切り捨てず、短縮の目的と制約を確認します。

資源平準化と工期短縮を混同しない

人員や機械が同じ時期に集中すると、計算上は開始できても実行できません。資源平準化は、フロートを使って非クリティカル作業の時期をずらし、資源の山をならす考え方です。必ずしも工期を短くする操作ではありません。

目的 主な操作 注意
工期短縮 CPの所要日数を縮める CPの変化と追加費用
資源平準化 余裕内で開始時期を調整 TF超過と資源の競合
進捗回復 実績を反映し残工程を再編 品質・安全・契約手続

出来高曲線は予定と実績の差を読む

累計出来高曲線は、時間に対する予定・実績の累計量や進捗率を示します。個別作業の依存関係はネットワークで、全体の進み方は累計曲線で見ると役割が分かれます。国土交通省関東地方整備局の工程表資料は、工程管理曲線について上限・下限の管理限界を示すものと説明しています。

曲線がS字に見えることだけで正常とは断定できません。計画線、許容範囲、実績線、基準日を比較し、差がどの作業で生じたかをネットワークへ戻して原因を特定します。

工程管理は計画・実績・予測を同じ粒度で更新する

国土交通省「データ活用による現場マネジメント(ICT施工StageⅡ)」関連資料は、施工計画・施工段階で作業手順、所要日数、クリティカルパスを見える化し、適切なリソースマネジメントを行う考え方を示しています。

  1. 計画:作業分解、前後関係、日数、暦、資源、検査点を設定する。
  2. 実績:実開始・実完了、出来高、残日数、停止理由を同じ作業単位で記録する。
  3. 予測:基準日以降の残工程を再計算し、完了見込みと新しいCPを出す。
  4. 対策:原因に対応する短縮・再配置・協議を行い、計画へ反映する。

予定日と実績日だけを並べても、残り日数が更新されなければ完了予測になりません。遅延理由を「人が足りない」で終わらせず、どの作業、どの資源、何日、どの後続へ影響するかを記録します。

計算ミスは5つのチェックで防ぐ

1. 合流は最大
順方向で小さい候補を採らない。
2. 分岐は最小
逆方向で大きい候補を採らない。
3. ダミーも追う
日数0でも前後関係を反映する。
4. TFとFFを分ける
全体余裕と後続余裕を混同しない。
5. 二重検算
最長経路とTF=0を照合する。

7日間でネットワーク計算を固める

演習 完了条件
1 令和8年度No.6を順方向計算 18日・33日を再現
2 逆方向計算 全イベントの最遅時刻を算出
3 TF・FF計算 違いを文章で説明
4 ダミー入り問題 前後関係を落とさない
5 遅延影響問題 遅れとTFを比較
6 複数CP・短縮問題 短縮後に再計算
7 問題B通し演習 式と根拠を残して見直す

よくある疑問

クリティカルパスは図の一番下や一番太い経路ですか?

見た目の位置では決まりません。始点から終点までの日数を計算し、TF=0の連続経路と照合します。複数になることもあります。

TFが1日の作業は1日遅れても後続へ影響しませんか?

限りません。後続の最早開始へ影響しない余裕はFFです。TFが1日でもFFが0なら、1日の遅れで後続開始は遅れますが、別の余裕を使って全体工期は守れる場合があります。

日数を短縮できれば、どの工法変更でも行えますか?

いいえ。設計図書、要求品質、安全、環境、費用、関係者調整、契約上の手続を確認します。計算上短くても、実行条件を満たさない案は工程対策になりません。

理解度チェック

次の問題は、公式問題を転載せず本記事用に作成したオリジナル問題です。

Q1. 順方向計算で複数の作業が同じイベントへ合流するときに採る値は?

①最小値 ②平均値 ③最大値 ④必ず0

正解:③。必要な先行作業がすべて終わるまで後続は開始できないため、完了候補の最大値を採ります。

Q2. 作業i→jの日数dについて、トータルフロートの式は?

①L(j)-E(i)-d ②E(i)+E(j)+d ③d-L(j) ④E(i)-d

正解:①。終点側の最遅時刻から、始点側の最早時刻と作業日数を引きます。

Q3. TF=2日、FF=0日の作業が1日遅れたときの基本的な影響は?

①後続も全体工期も必ず無影響 ②後続の最早開始は遅れ得るが全体工期は守れる ③全体工期が必ず2日遅れる ④作業を削除する

正解:②。FFは0なので後続の最早開始へ影響しますが、TF2日の範囲内なので他条件が同じなら全体工期は守れます。

Q4. クリティカル作業を短縮した直後に行うべき確認は?

①元のCPを固定する ②ネットワークを再計算し新しいCPを確認 ③非クリティカル作業を削除 ④出来高記録を破棄

正解:②。短縮により別経路が最長になる場合があります。複数CPが残っていないかも確認します。

確認に使った一次情報

まとめ

  • 令和8年度問題BのNo.6は、CP、最早開始、工期、遅延影響を一つの図で問いました。
  • 順方向は合流点で最大、逆方向は分岐点で最小を採ります。
  • TFは全体工期までの余裕、FFは後続の最早開始を守る余裕です。
  • 令和8年度の作業EはTF=0なので、3日遅れれば全体も3日遅れます。
  • 短縮後はCPを再計算し、資源・品質・安全・契約条件まで確認します。

次は「1級土木の品質管理」で、QC七つ道具と管理図を「何を見つける図か」から整理してください。

最後の自己点検

白紙に「前へ最大→後ろへ最小→TF・FF→CP」を書き、令和8年度No.6の18日・33日・Eの3日遅延を再現できるか確認してください。

-1級土木(第一次)