1級建築(第一次)

1級建築の環境工学①|必要換気量・採光・日照【2026年】

1級建築の環境工学①|必要換気量・採光・日照【2026年】

結論:環境工学は「物理量・単位・適用条件」をセットで判断する

必要換気量、昼光率、日影は、公式だけを覚えると条件の入替えで迷います。何を表す量か→どの単位か→式の前提は何かを確認すれば、数値計算と用語問題を同じ手順で解けます。令和8年度の1級建築施工管理・第一次検定では、No.2の必要換気量が全員解答、No.7の採光・照明が選択問題として出題されました。

令和8年度はNo.2が必須、No.7は選択

令和8年度1級建築・第一次検定の公式問題(午前)では、No.1〜6は全問解答です。必要換気量を求めるNo.2は外せません。一方、採光・照明のNo.7を含むNo.7〜15は、9問から6問を選びます。指定数を超えて解答すると減点されるため、知識だけでなく解答数の管理も必要です。

問題 形式 判断の中心
No.2 必須 CO2発生量と濃度差から必要換気量を算定
No.7 9問から6問を選択 光束・グレア・照度・全天空照度の定義

公式正答では、No.2は③の1,000m³/h、No.7は④が不適当です。番号ではなく、次に示す単位変換と定義から再現できるようにします。

必要換気量は「発生量÷濃度差」で求める

室内で発生する汚染物質が定常状態にあり、換気によって同じ量が外へ出ると考えると、必要換気量は次式で求められます。

Q=M÷(Ci-Co)

Q:必要換気量[m³/h]、M:室内の総発生量[m³/h]、Ci:許容室内濃度、Co:外気濃度。CiとCoは同じ無次元の割合へ直して使います。

大切なのは、室内許容濃度だけで割らず、外気にすでに含まれる濃度を差し引くことです。外から入る空気がゼロ濃度ではないため、換気で受け持てる濃度差はCi-Coになります。

令和8年度No.2を3段階で解く

公式問題の条件は、大学生30人、1人当たりCO2発生量0.02m³/h、外気400ppm、室内許容値1,000ppmです。呼気以外のCO2発生源はないものとされています。

段階 計算 意味
1 30×0.02=0.6m³/h 室内の総発生量M
2 1,000-400=600ppm=0.0006 換気で受け持つ濃度差
3 0.6÷0.0006=1,000m³/h 必要換気量Q

ppmは100万分率なので、600ppmは600÷1,000,000=0.0006です。600のまま割ると単位がそろいません。答案用紙の余白には、先に「ppm→×10−6」と書いてから代入すると桁間違いを減らせます。

換気量Qと換気回数nを混同しない

必要換気量Qの単位はm³/hで、1時間に入れ替える空気の体積です。換気回数nの単位は回/hで、室容積Vに対する換気量の割合です。関係はn=Q÷Vです。

たとえばQ=1,000m³/h、室容積V=500m³なら、換気回数は2回/hです。同じ1,000m³/hでも室が1,000m³なら1回/hになります。「m³/h」と「回/h」を見た時点で、求める量を切り替えてください。

CO2濃度1,000ppmは適用範囲まで読む

令和8年度No.2では、1,000ppmは計算条件として与えられています。また、厚生労働省の建築物環境衛生管理基準にも、空気調和設備・機械換気設備を設ける特定建築物について二酸化炭素濃度1,000ppm以下という基準があります。

ただし、これを「すべての室で一律に適用される必要換気量」と言い換えてはいけません。試験問題では提示条件に従い、実務では建物用途、対象法令、在室者、発生源、設計条件を確認します。人の呼気以外に燃焼器具などの発生源があれば、No.2と同じ前提では計算できません。

建築基準法の換気は目的別に分ける

「換気」と書かれた規定を一つにまとめると混乱します。居室の換気上有効な開口部などを扱う規定と、ホルムアルデヒド対策として機械換気設備を求める規定は、目的と確認事項が異なります。

観点 主に確認すること 学習上の注意
居室の換気 換気上有効な開口部または代替設備 採光用の有効面積と混同しない
シックハウス対策 内装材、天井裏等、機械換気設備 原則0.5回/hなど適用条件まで確認
室内空気の管理 CO2等の測定値と設備運転 対象建築物・設備の範囲を確認

国土交通省のシックハウス対策資料は、居室を有する建築物では原則として機械換気設備が必要であること、内装仕上げの制限などを整理しています。数値だけでなく「何を防ぐための規定か」まで結び付けます。

第1種・第2種・第3種は給気と排気で判定する

機械換気方式は、給気側と排気側に送風機があるかで分類します。部屋名を固定して覚えるより、圧力の向きから判断するほうが確実です。

方式 機械で行う側 圧力の考え方
第1種 給気・排気 風量の組合せで調整しやすい
第2種 給気 一般に正圧側へしやすい
第3種 排気 一般に負圧側へしやすい

用途名だけで「必ず第2種」「必ず第3種」と断定せず、清浄側から汚染側へ空気を流したいのか、外部からの汚染空気の侵入を抑えたいのか、計画条件を読みます。

採光・照明は四つの言葉を短く定義する

令和8年度No.7では、似ている用語の定義が並びました。名詞を一文に圧縮しておくと入替えに気づけます。

用語 判断用の短い定義 着眼点
光束 人の目の感度で重み付けした光の量 単位はlm
照度 受照面の単位面積に入る光束 単位はlx=lm/m²
グレア 高輝度部や大きな輝度対比によるまぶしさ 明るさの量だけではない
全天空照度 天空光による屋外水平面照度 直射日光を含めない

No.7の不適当な記述は、全天空照度に直射日光を含めた点です。「全天空」という語から太陽の直射光まで含むと早合点しないでください。

昼光率は屋外の変動を比で切り離す

昼光率は、ある室内点の昼光による照度を、天空が遮られていない屋外水平面の全天空照度で割り、100を掛けた割合です。式は昼光率=室内の昼光照度÷屋外の全天空照度×100%です。

分子と分母を同時刻・同じ天空条件で対応させるため、空の明るさそのものが変わっても採光性能を比較しやすくなります。ここでも直射日光は除いて考えます。昼光率と、窓面積を床面積と比べる法令上の採光規定は同じ量ではありません。

住宅の採光は「常に1/7」と決め付けない

住宅の居室は、採光に有効な開口部面積を床面積の7分の1以上とするのが原則です。ただし、国土交通省の令和5年4月施行の採光規定見直しにより、必要な照明設備を設けるなどの条件を満たす住宅の居室では、10分の1まで緩和できる仕組みがあります。

さらに、窓の実面積がそのまま「採光に有効な部分の面積」になるとは限りません。開口部の位置や外部条件に応じた採光補正係数を考慮します。学校・病院などを住宅と同じ比率で一括暗記せず、用途、居室、現行規定、緩和条件を確認してください。

日照と日影は太陽高度から考える

太陽高度hは地平面から太陽までの角度、太陽方位角は水平方向の位置です。高さHの鉛直物体が水平面につくる影の長さLは、単純化した条件ならL=H÷tan hで求められます。太陽高度が低いほどtan hが小さくなり、影は長くなります。

「冬は影が長い」は、冬季の太陽高度が低いことから説明できます。一方、方位角の正負や原点の取り方は資料の座標系で異なるため、「東は必ずマイナス」のように符号だけを固定しません。図中の北・南と回転方向を先に確認します。

日影規制は地域条件を先に確認する

日影規制は、建築物が周囲に生じさせる日影時間を冬至日の条件で制限する仕組みです。ただし、対象区域、対象となる建築物、測定面の高さ、許容時間は一律ではなく、用途地域や地方公共団体の指定で変わります。

試験対策では「冬至日」「一定の測定面」「敷地境界線からの距離帯」という構造を押さえ、実務では計画地の都市計画情報と条例を確認します。全国共通の固定時刻や固定時間を一つだけ覚えて設計判断に使わないでください。

計算問題の見直しは単位から逆算する

60秒の検算手順

  1. 求める量に下線を引き、m³/h、回/h、%、lxのどれかを書く。
  2. 人数を掛けて総発生量にしたか、ppmを割合へ直したかを確認する。
  3. 室内濃度から外気濃度を引いたかを確認する。
  4. 換気量が増えるべき条件を考え、答えの大小が直感と逆でないかを見る。

たとえば在室者が増えれば発生量が増え、同じ許容濃度を保つ必要換気量は増えます。外気濃度が室内許容値へ近づけば使える濃度差が小さくなり、必要換気量は増えます。この増減関係は、計算機の入力ミスを見抜く有効な検算です。

オリジナル確認問題4問

以下は公式問題を転載せず、本記事用に作成したオリジナル問題です。

問題1:20人が在室し、1人当たりのCO2発生量が0.018m³/h、外気濃度400ppm、室内許容濃度1,000ppmのとき、必要換気量はいくらですか。

①60m³/h ②360m³/h ③600m³/h ④1,000m³/h

問題2:換気量900m³/h、室容積450m³の室の換気回数はどれですか。

①0.5回/h ②2回/h ③450回/h ④1,350回/h

問題3:全天空照度の説明として適切なのはどれですか。

①直射日光だけによる鉛直面照度 ②天空光による屋外水平面照度 ③照明器具の光束の合計 ④室内照度と床面積の積

問題4:高さ6mの鉛直物体に対し、太陽高度が45度のとき、水平面の影の長さはいくらですか。地盤は水平、tan45度=1とします。

①3m ②6m ③8.5m ④12m

公式資料と更新方針

法令・告示・条例は改正されます。実務では計画地、建物用途、居室、設備の条件を特定し、e-Gov法令検索、所管行政庁、最新版の設計図書で確認してください。

まとめ

  • 令和8年度No.2は必須の必要換気量計算で、答えは1,000m³/hです。
  • Q=M÷(Ci-Co)を使い、人数分の総発生量とppmの換算を先に処理します。
  • 換気量m³/hと換気回数回/h、計算条件と法令の適用範囲を分けます。
  • 全天空照度は天空光による水平面照度で、直射日光を含みません。
  • 住宅の採光は原則1/7ですが、現行制度には照明設備などを条件とする1/10の緩和があります。
  • 影の長さはL=H÷tan hで考え、日影規制の具体条件は地域ごとに確認します。

熱・湿気・結露の続きは「1級建築の環境工学②」、建築一般の全体像は「1級建築施工管理技士の建築学」へ進んでください。

最後の自己点検

白紙に「Q=M÷(Ci-Co)」を書き、30人の問題を単位付きで再計算してください。続けて、全天空照度に直射日光を含めない理由と、住宅採光の1/10緩和には条件があることを一文で説明できれば、この範囲の判断軸は完成です。

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