1級土木(第一次)

1級土木の基礎工|場所打ち杭・既製杭・土留めの施工判断

1級土木の基礎工|場所打ち杭・既製杭・土留めの施工判断

結論:工法名より「荷重・地盤・地下水・施工記録」をつなぐ

1級土木の基礎工は、工法名の暗記だけでは解けません。荷重をどこへ伝えるか、支持層をどう確認するか、孔壁と地下水をどう安定させるか、施工結果を何で証明するかを順に考えます。既製杭は支持層への到達、場所打ち杭は孔底とコンクリートの品質、土留めは掘削中の変位と地下水が中心です。

令和8年度問題が問う3つの場面

令和8年度1級土木・第一次検定の公式問題Aでは、No.17に道路橋の基礎形式、No.18に既製杭、No.19に場所打ち杭が並びました。つまり、形式を選ぶ場面、杭を施工する場面、出来形と品質を確認する場面を横断して理解する必要があります。

年度ごとに出題位置や数は変わります。「毎年何問」と固定せず、全国建設研修センターの試験問題・正答肢で最新年度を確認してください。問題A全体の選択方法は「第一次検定の出題構成と選択戦略」で整理しています。

基礎は上部の荷重を地盤へ渡す装置

基礎形式を考える出発点は、上部構造の鉛直力・水平力・モーメントを、許容できる沈下と変位の範囲で地盤へ伝えられるかです。表面近くに十分な支持力をもつ地盤があれば直接基礎、深い位置の支持層や周面抵抗を利用する必要があれば杭基礎が候補になります。

ただし「支持層が深いから必ず場所打ち杭」という一対一の決め方はできません。荷重、地層、地下水、近接構造物、騒音・振動、施工空間、運搬経路、工期、品質確認の方法を比較します。地盤改良との使い分けは「軟弱地盤対策・法面保護」で確認できます。

直接基礎と杭基礎は確認対象が違う

形式 主な確認対象 見落としやすい点
直接基礎 床付け地盤、支持力、沈下、排水 掘削によるゆるみ・湧水
既製杭 杭体、接合、支持層到達、杭頭 施工抵抗だけの早合点
場所打ち杭 孔壁、孔底、鉄筋かご、コンクリート スライム・孔内水位・連続打込み

杭の支持は、先端だけでなく周面摩擦も関係します。したがって、杭長が図面どおりというだけで性能を証明したことにはなりません。どの地層へ、どの状態で、どの施工記録を残して到達したかが重要です。

工法選定は6条件を同じ表に置く

  1. 地盤:支持層の深さ・傾斜・硬さ、中間層、転石、液状化の可能性。
  2. 地下水:水位、透水性、被圧水、周辺井戸や地盤への影響。
  3. 荷重:鉛直力、水平力、引抜き、許容沈下、基礎寸法。
  4. 周辺:既設構造物、埋設物、鉄道・道路、騒音・振動の制約。
  5. 施工:作業床、機械高さ、搬入路、残土・泥水処理、天候。
  6. 検証:支持層、鉛直性、杭長、材料量、出来形を記録できるか。

試験では、ある工法の長所だけを強調した選択肢に注意します。適用できる地盤でも、近接条件や作業空間で不適切になることがあります。「掘れるか」だけでなく「周辺に影響を与えず、結果を確認できるか」まで読みます。

既製杭は施工法ごとに支持層の確認方法が変わる

施工法 施工の中心 管理の中心
打撃・振動 杭を打ち込む 貫入量、打撃条件、杭体損傷、周辺影響
中掘り 杭内部から排土して沈設 先端処理、支持層、過掘削
プレボーリング 先行掘削孔へ杭を建て込む 掘削・攪拌、根固め、杭位置・鉛直性

ほかにも鋼管ソイルセメント杭工法や回転杭工法があります。名称を横並びに覚えるだけではなく、地盤へ杭を入れる力と、支持力を発揮させる先端部・周面部の作り方に分けてください。

既製杭は試験杭で本杭の管理基準を組み立てる

地盤調査資料は点の情報です。実際の施工位置で地層が同じとは限らないため、試験杭で施工機械、施工法、支持層の確認方法、杭体への影響、施工記録を確かめ、本杭の管理へ反映します。

埋込み杭では、支持層付近で掘削速度を極力一定にし、掘削抵抗、オーガ駆動電流、回転トルクなどの変化をボーリング柱状図や試験杭の記録と照合します。電流が一度上がったから支持層と即断するのではなく、深度、掘削土、抵抗変化、調査資料を重ねます。

数値だけで管理しない

到達深度だけを合わせても、支持層を過度に掘削したり、根固め部の品質が不足したりすれば性能は守れません。施工中の変化と事前資料を照合し、異常があれば原因を確認してから進めます。

打込み杭は貫入抵抗と杭体の健全性を両方見る

打込み杭では、打撃回数や最終貫入量などから施工状態を確認します。ただし、硬い中間層で貫入が止まった、杭先端が損傷した、ハンマ能力が合っていないという可能性もあります。記録値だけで支持層到達と決めず、地層、杭長、打撃条件、リバウンド、杭体の状態を合わせて判断します。

施工前には杭のひび割れ・変形・継手を確認し、建込みでは位置と鉛直性を守ります。杭頭を過度に損傷させないよう、杭材と施工条件に合うクッションや打撃条件を選びます。近隣への振動・騒音・地盤変位も施工法選定の条件です。

埋込み杭は過掘削と根固め部の品質に注意する

埋込み杭では、支持層確認後に必要以上の掘削や攪拌を続けると、支持層を乱すおそれがあります。先端処理は採用工法の施工要領に従い、掘削深度、攪拌時間、使用材料、注入量、電流・トルクなどを記録します。

中掘り工法でコンクリートによる根固め部を築造する場合は、孔底の沈殿物を除去し、トレミー管で施工します。「杭を所定深度まで入れた」で完了にせず、先端部が計画どおり一体化するまでが品質管理です。

場所打ち杭は8工程を切らずに覚える

  1. 施工機械を安全に支持できる作業床をつくり、杭心を確認する。
  2. 地盤と工法に合う方法で孔壁を安定させ、鉛直に掘削する。
  3. 深度、掘削土、調査記録などから支持層を確認する。
  4. 孔底に沈積したスライムを除去し、孔底深度を確認する。
  5. 鉄筋かごを変形・座屈・落下させずに建て込む。
  6. トレミー管を設置し、初期のコンクリートを確実に閉塞させる。
  7. コンクリート量と上面高さを確認しながら連続して打ち込む。
  8. 杭頭の低品質部を除去し、位置・高さ・杭径などを確認する。

途中の一工程だけを良くしても杭全体の品質は回復しません。孔底にスライムが残ったまま良質なコンクリートを打っても先端支持は不安定です。逆に、孔底をきれいにしてもコンクリートを泥水と混ぜれば杭体品質が下がります。

場所打ち杭3工法は孔壁を支える仕組みで分ける

工法 孔壁安定の考え方 管理点
オールケーシング ケーシングで孔壁を保護 鉛直性、先端、引抜き、鉄筋かご浮上
アースドリル 表層ケーシングと安定液 安定液性状、孔内水位、スライム
リバース 孔内水圧で孔壁を安定 水位差、循環水、掘削土、孔底

ケーシングを使えば無条件に孔壁崩壊がなくなる、安定液を使えばどの地盤でも安定する、とはいえません。土質、地下水、施工深度、掘削速度、ケーシング先端位置、安定液や循環水の管理が適切であることが前提です。

孔内水位は孔壁を支える圧力として管理する

地下水のある地盤では、孔内水圧が外側の地下水圧に負けると、孔壁の不安定化や土砂流入につながります。リバース工法やアースドリル工法などでは、孔内水位を外水位より低下させないよう管理し、安定液・循環水の比重、粘性、砂分などを採用基準に従って確認します。

水位は一度測って終わりではありません。掘削、鉄筋かご建込み、スライム処理、コンクリート打込みで状態が変わります。逸水や急な水位変化があれば、孔壁状態や周辺地盤への影響を確認し、原因を解消してから再開します。

支持層確認は深度・土質・掘削反応を重ねる

場所打ち杭の支持層は、設計深度へ届いたという一本の情報だけで確認しません。掘削深度、掘削土の種類、掘削機の反応、ボーリング柱状図、必要に応じて採取試料を照合します。支持層が傾斜している場合は、隣接杭と同じ長さになるとは限りません。

異なる地層が現れた、予定深度で反応が合わない、掘削土が想定と違う場合は、記録を残して施工管理者・監督職員等へ報告し、設計図書に基づき対応します。現場判断で杭長をそろえることを優先してはいけません。

スライム処理は二つの時点を比較する

スライムは孔底へ沈積した掘削くずや泥分です。残したままコンクリートを打つと、杭先端と支持層の間に弱い層を作り、支持力低下の原因になります。

国土交通省の令和8年版施工管理基準では、孔底沈殿物の確認を掘削完了直後とコンクリート打込み前に行い、測定深度を比較する考え方が示されています。処理から時間が空けば再沈積するため、最初の処理結果だけで安心せず、打込み直前の状態を確認します。

ここでも深度値だけを見ません。測定方法、孔底形状、経過時間、安定液や循環水の状態をそろえて比較し、基準を満たさなければ再処理します。

鉄筋かごは変形・かぶり・浮上を防ぐ

鉄筋かごは、吊上げ・建込み中に曲げ、座屈、接合部の損傷を起こさないよう吊り点と補強を計画します。スペーサでかぶりを確保し、杭心に対して偏らないよう建て込みます。孔壁へ強く接触させると、孔壁を乱したり、かぶり不足を招いたりします。

コンクリート打込み時は、上昇するコンクリートやケーシング引抜きで鉄筋かごが浮上することがあります。鉄筋かごの高さ、トレミー管とケーシングの位置、コンクリート上面を継続して確認します。

トレミーは泥水とコンクリートを混ぜないために使う

トレミー管は、コンクリートを孔底から連続して打ち上げ、孔内水や安定液との混合を抑えるために使います。最初にプランジャー等で水とコンクリートを分離し、途中で管の下端がコンクリートから抜けないようにします。

国土交通省の令和8年3月共通仕様書では、打込み開始時を除き、トレミー管をコンクリートの上面から2m以上入れておく規定です。同時に、コンクリートの打込み量と上面高さを測り、計画断面から大きく外れる変化がないか確認します。2mだけを守ればよいのではなく、連続性、管内閉塞、孔壁崩壊、余掘りの兆候まで見ます。

ケーシング引抜きと杭頭処理を最後まで管理する

オールケーシング工法では、コンクリート打込みに合わせてケーシングを引き抜きます。引抜きが速すぎる、ケーシング下端がコンクリート上面へ近づきすぎると、孔壁土砂や水を巻き込むおそれがあります。共通仕様書の適用条件では、最終時を除きケーシング下端をコンクリート内へ2m以上入れておく扱いです。

杭頭部は泥水やレイタンスの影響を受けやすいため、設計杭頭より余盛りして打ち込み、硬化後に低品質部を除去します。余盛り量は、孔内水を使ったかどうかなどで適用仕様の値が変わります。一律の数字として覚えず、工法・孔内条件・契約図書を確認してください。

土留め壁は剛性・止水・施工条件を比較する

形式 特徴 注意点
親杭横矢板 掘削に合わせ横矢板を設置 壁が連続せず、地下水対策を別に検討
鋼矢板 継手をもつ連続壁 打設時の振動・騒音、継手、引抜き
地中連続壁・柱列壁 高い剛性や遮水性を計画可能 継手、鉛直性、配合・造成品質

「止水性がある」と「水が一切入らない」は同じではありません。継手、欠損、地層、壁の根入れ、施工精度で水の通り道が生じます。必要な遮水性能と周辺地下水への影響を施工計画で検討します。

切ばり・腹起し・アンカーの役割を分ける

  • 腹起し:土留め壁が受けた土圧・水圧を連続して集めます。
  • 切ばり:対向する壁の腹起しを押さえ、掘削内側で支えます。
  • 火打ち:隅角部などの変形を抑え、力を伝えます。
  • グラウンドアンカー:背面地盤へ引張力を伝え、掘削空間を確保します。

切ばりと腹起しは、各部材が均等に働くよう密着させます。掘削だけを先行すると土留め壁の変位が増えるため、計画した段階まで掘削し、腹起し・切ばり等を設置してから次の段階へ進みます。アンカーは敷地境界、地下埋設物、周辺権利との関係も確認が必要です。

掘削底面の破壊は土質と水の向きで見分ける

現象 起こり方 対策の方向
ヒービング 軟弱粘性土地盤で背面側の荷重により掘削底が盛り上がる 根入れ、地盤改良、掘削・支保順序、背面荷重
ボイリング 砂質地盤で上向き浸透流により砂粒子が不安定になる 水頭差、根入れ、排水・止水、地盤改良
パイピング 集中した浸透流が土粒子を運び、水みちが発達する 浸透経路、遮水、地下水管理、早期の土砂流出検知

排水量を増やせば常に安全になるわけではありません。掘削内の水位を急に下げると水頭差が増し、周辺地盤の沈下や井戸への影響も生じます。土質、透水性、地下水位、流入量を調査し、止水と排水を組み合わせます。

土留めは変位・荷重・水位を時系列で読む

土留め管理では、壁の水平変位、周辺地盤の沈下、切ばり軸力、地下水位、掘削底面、近接構造物・埋設物を計測します。管理値は壁の形式、掘削深さ、地盤、近接条件、設計値に応じて施工計画で設定します。全現場共通の固定値ではありません。

重要なのは、測定値が基準内かだけでなく、掘削段階や降雨とともにどう変化したかです。変位速度が上がる、切ばり軸力が急変する、濁水や土砂流出が出るなどの兆候を把握し、あらかじめ決めた連絡・中止・補強の手順へつなげます。安全管理全体は「鉄道・営業線近接工事の安全管理」も参考になります。

現場例|市街地の橋台基礎を施工する

地下水位が高く、既設道路と建物に近い場所で、土留め掘削の内側に場所打ち杭を施工する例を考えます。

  1. 地層、地下水、埋設物、近隣建物の事前状態を調査し、計測点を決める。
  2. 土留め壁の剛性・根入れ・遮水性と、切ばりの段階施工を照合する。
  3. 機械荷重に耐える作業床を設け、杭心と鉛直性を確認する。
  4. 孔内水位と安定液を管理し、支持層を複数の記録で確認する。
  5. スライムを処理し、打込み直前にも孔底深度を再確認する。
  6. 鉄筋かごを建て込み、トレミーで連続打込みし、材料量と上面を記録する。
  7. 土留め変位、地盤沈下、水位を掘削段階と対応させて評価する。

この例では、杭と土留めを別科目として切り離しません。揚水が杭孔や周辺地盤へ与える影響、杭施工機械が土留め背面へ与える荷重まで一つの施工計画で確認します。土工の施工順序は「土量計算・盛土の施工管理」、コンクリート打込みの基本は「配合設計・打込み・締固め」で補ってください。

第一次検定で誤りを見抜く5手順

  1. 対象を決める。既製杭、場所打ち杭、土留めのどれか。
  2. 工程を置く。施工前、掘削中、支持層確認、打込み、完了時のどこか。
  3. 守る性能を付ける。支持力、杭体品質、孔壁安定、周辺安全のどれか。
  4. 条件を探す。地盤、地下水、深度、工法、適用仕様が省略されていないか。
  5. 記録を問う。その判断を何で確認・証明するか。

「必ず」「一律」「数値だけ」の表現は、条件不足を疑います。独学の復習方法は「1級土木の独学勉強法」、関連する構造形式は「鋼構造・コンクリート構造・PC」へつなげてください。

確認クイズ

Q1. 埋込み杭の支持層は、設計深度へ到達したことだけで確認してよい?

いけません。支持層付近の掘削抵抗・電流・トルク、掘削土、深度、ボーリング記録、試験杭の記録などを照合します。

Q2. 場所打ち杭のスライム確認を二回行うのはなぜ?

処理後にも再沈積するためです。掘削完了直後と打込み前の深度を比較し、必要なら再処理します。

Q3. トレミー管の下端が打込み途中でコンクリート上面から抜けると何が問題?

孔内水・安定液や土砂を巻き込み、杭体の連続性を損なうおそれがあります。適用仕様の挿入深さを保ち、上面高さと打込み量を管理します。

Q4. 軟弱粘性土地盤で掘削底が盛り上がる現象は?

ヒービングです。砂質地盤の上向き浸透流によるボイリングと、土質・発生機構を分けて覚えます。

公式資料で確認する

公式問題の選択肢は転載せず、論点を学習用の判断手順へ組み替えました。実務では最新の設計図書、特記仕様書、承認された施工計画書、採用工法の施工要領、監督職員との協議内容を優先してください。

まとめ|基礎工は確認できる施工にする

  • 基礎形式は、荷重・地盤・地下水・周辺条件・施工・検証の6条件で選ぶ。
  • 既製杭は試験杭を基に、支持層付近の抵抗変化と地盤調査資料を照合する。
  • 場所打ち杭は、孔壁安定→支持層→スライム→鉄筋かご→トレミーを切らずに管理する。
  • 孔内水位は孔壁を支える圧力、スライムは杭先端の弱層という役割で覚える。
  • 土留めは壁だけでなく、支保工、掘削順序、地下水、周辺変位を時系列で見る。
  • 固定値の丸暗記を避け、工法・起点・測定時点・適用仕様とセットで判断する。

次は「鋼構造・コンクリート構造・PC」へ進み、基礎から上部構造へ荷重が伝わる流れを完成させてください。

-1級土木(第一次)