1級建築の各種構造②|木造・基礎・地盤の判断軸【2026年】では、用語の丸暗記ではなく、建物の重さが屋根・床から壁や柱、基礎、地盤へ流れる順序で整理します。
先に結論
- 令和8年度は、地盤・基礎構造が午前の必須問題No.4で出題されました。
- No.4は、圧密沈下、液状化、沈下量の限界、基礎梁の剛性を一つずつ判定する問題です。
- 木造は令和8年度午前No.1〜44に直接の出題がありません。旧記事の「必ず出る」「CLTは新テーマ」という決め付けは使いません。
- 地盤の数値一つで基礎を決めず、荷重、地層、地下水、沈下、施工条件をつなげて判断します。
この記事は、建設業振興基金が2026年7月21日に公表した令和8年度問題・正答肢と、国土交通省の現行資料を照合して作成しています。公式問題の文章は転載せず、出題範囲と判断根拠だけを解説します。
令和8年度の出題位置を先に確認する
午前のNo.1〜6は全問解答です。その中のNo.4が「地盤及び基礎構造」で、正答肢は3でした。したがって、2026年度の実績から優先すべきなのは、木造の構法名を広く暗記することより、地盤の現象と基礎の働きを説明できる状態です。
| 範囲 | 令和8年度 | 学習の軸 |
|---|---|---|
| 地盤・基礎 | No.4・必須 | 現象→影響→対策 |
| 構造力学 | No.5必須、No.11・12選択 | 力の釣合いと図 |
| 木造 | 午前No.1〜44に直接出題なし | 荷重経路と接合 |
「今年出なかったから木造は不要」という意味ではありません。年度ごとに出題は変わります。ただし、根拠なく「毎年必ず出る」と書くのも不正確です。直近の公式問題を基準に、必須範囲から順に学びます。
No.4は4つの記述を別々に判定する
令和8年度No.4の4肢は、①粘性土地盤の圧密沈下、②地下水面下の砂質土の液状化、③独立基礎とべた基礎の沈下量の限界、④基礎梁の剛性と不同沈下、という構成でした。
正答は③です。独立基礎のほうがべた基礎より沈下量の限界値が大きい、という向きが不適当でした。数字を一組だけ覚えるより、局部的に支持する独立基礎と、面で一体的に支持するべた基礎では、許容する沈下の考え方が同じではないと理解します。
解く順序
土の種類を特定 → 水の動きを考える → 建物に生じる変形を見る → 基礎が荷重をどう分配するか確認、の順で読めば、似た言葉に惑わされません。
圧密沈下は「粘性土から水が抜ける時間変化」
粘性土は粒子が細かく、水が抜けにくい土です。建物や盛土の荷重が加わると、土中の水が時間をかけて排出され、間隙が小さくなります。その結果として沈下が進むのが圧密沈下です。
ここで大切なのは、荷重を受けた瞬間だけを見ないことです。竣工時に問題がなくても、その後に沈下差が大きくなることがあります。現場ではボーリング柱状図、圧密試験、盛土履歴、周辺建物の変状、地下水の変化を設計者と共有します。
建物全体が同じ量だけ沈む「一様な沈下」より、柱や壁ごとに沈下量が違う不同沈下のほうが、ひび割れ、建具の不具合、配管勾配の変化につながりやすい点も押さえます。
液状化は「砂・水・繰返し」の組合せで読む
液状化は、地下水面より下の飽和した砂質地盤が地震の繰返しせん断を受け、間隙水圧が上昇して有効応力が小さくなる現象です。単に「砂なら液状化する」「粘土なら絶対にしない」と二分せず、粒度、締まり具合、地下水位、地震動、地層の連続性を調べます。
| 見る条件 | 起こり得ること | 確認資料 |
|---|---|---|
| 飽和した砂質層 | 間隙水圧の上昇 | 土質・粒度・地下水位 |
| 緩い堆積 | 沈下・側方流動 | N値・地形・造成履歴 |
| 地中構造物 | 浮上り・接続部損傷 | 埋設図・浮力検討 |
対策も「液状化対策工法」という名前だけで選びません。締固め、排水、固化、地下水位低下、基礎による影響低減などから、対象深度、周辺への変位、施工空間、騒音・振動を照合します。
N値だけで支持層を決めない
N値は、標準貫入試験で標準貫入試験用サンプラーを所定量貫入させるのに必要な打撃回数を表す指標です。地盤の締まり具合や硬さを読む手掛かりですが、「N値50以上なら必ず支持層」ではありません。
必要な支持力は建物荷重と基礎形式で変わります。また、薄い硬質層の下に軟弱層がある場合、杭先端を止めただけでは沈下や支持の問題が残ります。土質名、層厚、連続性、地下水、サンプリング、室内試験、周面摩擦、先端支持を合わせて評価します。
現場での読み方
「N値が大きい」で止めず、どの深さに、何mの厚さで、どの土質が続き、その上下に何があるかを柱状図で追います。
直接基礎は接地圧と沈下を同時に見る
直接基礎は、基礎底面から地盤へ荷重を伝えます。独立基礎、布基礎、べた基礎という名称を、建物用途だけで固定しないでください。柱荷重、壁配置、地盤の許容応力度、偏心、地下水、近接基礎との重なり、不同沈下を検討して決めます。
- 独立基礎:主に柱ごとに荷重を地盤へ渡す。柱間の沈下差と基礎梁の働きを確認する。
- 布基礎:壁や柱列の下を連続して支持する。開口や段差部で荷重経路を切らない。
- べた基礎:底版を面として使う。接地圧を分散できても、浮力や全体沈下の検討は必要。
国土交通省の基礎告示には地盤の長期許容応力度に応じた構造方法が示されていますが、数値だけを一般建築の万能な選定表にしません。例外条件や構造計算があり、実工事では確認済みの構造図と地盤調査報告書を優先します。
基礎梁は柱脚間をつないで沈下差へ抵抗する
令和8年度No.4では、基礎梁の剛性を高くすることで不同沈下を均等化する、という記述は適当な肢でした。基礎梁は基礎同士をつなぎ、柱脚の水平力や曲げ、沈下差に抵抗します。
ただし、「梁を大きくすれば地盤問題が消える」という意味ではありません。地盤の支持性能が不足する場合は、基礎形式、地盤改良、杭、建物重量、上部架構を含めて見直します。構造体へ有害な応力を移す可能性もあるため、剛性だけを現場判断で変更しません。
杭基礎は先端・周面・沈下を一続きで考える
杭基礎は、杭先端の支持力と杭周面の摩擦力を使って荷重を地盤へ伝えます。「支持杭」「摩擦杭」という呼び名だけで二分せず、実際の支持機構、杭頭接合、杭体、継手、先端、支持層を一続きで確認します。
軟弱地盤が杭より大きく沈下すると、杭周面に下向きの摩擦力が働くことがあります。これが負の摩擦力です。杭へ追加軸力が生じるため、盛土、地下水位低下、圧密層の厚さと一緒に検討します。
施工管理では、杭芯、鉛直性、掘削深度、支持層確認、根固め、スライム、鉄筋かご、コンクリート、杭頭処理など、工法に応じた記録を残します。場所打ち杭の詳しい施工判断は「1級土木の基礎工」も補助教材になりますが、建築工事では構造図と建築工事標準仕様書を優先してください。
木造は構法名より荷重経路と接合を見る
木造は、屋根・床に入った力を、耐力壁や軸組、接合部、土台、アンカーボルト、基礎へ渡します。在来軸組構法、枠組壁工法、CLTパネル工法では部材の構成が違っても、途中で力が切れないことが共通の要点です。
旧記事は「在来は自由、枠組壁は制約」「枠組壁は気密断熱に優れる」と単純に順位付けしていました。しかし、開口、壁配置、断熱・気密性能、工期は、設計と仕様、施工精度で変わります。構法名だけで性能を保証しません。
| 確認点 | 力の流れ | 施工記録 |
|---|---|---|
| 床・屋根 | 面から壁・梁へ | 釘・ビス・接合金物 |
| 耐力壁・軸組 | 水平力を基礎へ | 配置・端部・開口 |
| 土台・基礎 | 上部から地盤へ | アンカー・座金・かぶり |
2025年施行の壁量基準は建物の実際の重さを見る
省エネ化に伴う断熱材、設備、太陽光発電設備などで木造建築物が重量化していることを受け、必要壁量と柱の小径に関する基準が見直され、2025年4月1日に施行されました。仕様の実況に応じて必要壁量を算定する考え方です。
そのため、古い早見表の数字を建物条件を見ずに当てはめる学習は避けます。屋根の仕様、外壁、床、太陽光発電設備、階高、柱の負担面積など、設問に示された条件を拾います。国土交通省は2026年3月に経過措置終了の周知も公表しています。
たとえば、同じ2階建て木造でも、軽い屋根の建物と、重い屋根・太陽光発電設備を持つ建物では必要な耐力要素を同じにできません。施工者は確認済み図書の壁位置、壁倍率、柱、金物を現場へ正しく移し、設備開口や納まり変更を独断で行わないことが重要です。
木材は表示・含水状態・保管・接合を管理する
木材は樹種名だけで判断しません。設計図書が求める等級、強度、寸法、含水率区分、保存処理、JAS表示などを受入れ時に照合します。濡れや反り、割れ、腐朽、虫害を防ぐため、地面から離し、通風を確保し、雨掛かりを避けて保管します。
現場加工で耐力壁の面材、柱、梁、接合金物を傷めれば、計画した荷重経路が変わります。設備配管やダクトが干渉したときは、構造部材を切り欠く前に、設計者と納まりを調整します。
CLTは、ひき板を繊維方向が互いに直交するよう積層接着した木質パネルです。ただし、「RCの5分の1」「パネルを組むだけで必ず工期短縮」といった条件のない数値・効果は使いません。パネル、接合部、揚重、耐火、防水、建方精度を含めて評価します。
現場例:木造2階建ての基礎着工前に止める点
- 地盤調査報告書で地層、地下水位、支持の根拠、沈下検討を確認する。
- 構造図で基礎形式、底盤、基礎梁、アンカーボルト、ホールダウン金物の位置を確認する。
- 設備図と重ね、貫通部や配管スリーブが主筋・立上り・金物と干渉しないか確認する。
- 根切り後、地盤の乱れ、湧水、設計と違う土質がないか確認し、相違があれば施工前に報告する。
- 上部木造の耐力壁位置まで見通し、荷重を受ける基礎が途切れていないか確認する。
基礎伏図だけを見ると、木造の壁と基礎の関係を見落とします。意匠図、構造図、設備図、地盤調査報告書を同じ位置で重ねるのが実務的な確認方法です。
オリジナル確認問題4問
以下は公式問題を転載せず、本記事用に作成したオリジナル問題です。
問題1:粘性土地盤の圧密沈下を最も適切に説明しているものはどれですか。
①砂粒子が瞬時に蒸発する ②土中の水が時間をかけて抜けて間隙が減る ③木材が乾燥する ④杭が必ず浮き上がる
問題2:液状化の調査で、最初から一つだけを見ればよい情報はどれですか。
①N値だけ ②土質名だけ ③地下水位だけ ④一つだけでは判定しない
問題3:地盤調査で大きいN値を確認したとき、次に行う判断として適切なのはどれですか。
①必ずそこで杭を止める ②層厚・土質・連続性と必要支持力を確認する ③地下水を無視する ④上部荷重を無視する
問題4:木造の耐力壁位置に設備開口が干渉したとき、適切な行動はどれですか。
①現場で面材を切る ②柱を欠き取る ③確認済み図書と照合し設計者へ確認する ④金物を外す
公式資料と更新方針
- 建設業振興基金「令和8年度 1級建築 第一次検定問題(午前)」:No.4と問題選択区分の確認
- 令和8年度 第一次検定正答肢・配点:No.4の正答肢3を確認
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」:地業、杭、地盤改良の施工・品質
- 国土交通省「公共建築木造工事標準仕様書 令和7年版」:木材、接合、防腐・防蟻、建方
- 国土交通省「木造建築物の必要壁量等の基準」:2025年4月施行と2026年3月の経過措置終了
- 国土交通省「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準」:地盤の長期許容応力度と基礎
- 国土交通省「宅地液状化の調査・検討に必要な情報」:土地の成り立ちと地盤情報
本記事の数値や出題位置は2026年7月31日時点で確認しています。令和9年度問題、建築基準法関係告示、公共建築標準仕様書の改定時に再確認します。実工事では確認済み図書、特記仕様書、地盤調査報告書、設計者の指示を優先してください。
まとめ
- 令和8年度は地盤・基礎構造が必須No.4で出題され、正答肢は3でした。
- 圧密沈下は粘性土から水が時間をかけて抜ける現象、液状化は飽和砂質土の間隙水圧上昇を軸に考えます。
- N値は地盤を読む一つの指標であり、50以上だけを根拠に支持層を決めません。
- 直接基礎・杭基礎は、荷重、地層、地下水、沈下、施工条件をつないで選びます。
- 木造は構法名の順位ではなく、床・壁・接合部・土台・基礎へ続く荷重経路を確認します。
- 2025年施行の壁量基準は、建物の仕様の実況に応じて必要壁量を算定する考え方です。
鉄骨・RC・SRCの続きは「1級建築の各種構造①」、力の計算は「1級建築の構造力学」、第一次検定全体の選択順は「1級建築 第一次検定の攻略法」へ進んでください。
最後の自己点検
白紙に「屋根・床→壁・柱→接合部→基礎→地盤」と書き、圧密沈下、液状化、不同沈下を一行ずつ説明してください。土の種類、水の動き、建物への影響をつなげられれば完成です。