1級建築の各種構造①|S造・RC造・SRC造【2026年】
結論:「強さ」と「硬さ」、「材料」と「接合部」を分けて解く
構造形式を「RCは重い、Sは軽い、SRCは両方」の比較表だけで覚えると、部材・接合・施工の問題に対応できません。荷重をどこへ流すか→材料が何に抵抗するか→接合部で力をどう渡すか→施工時に何を検査するかの順で考えると、令和8年度の鋼構造、鋼材、RC梁、SRC納まりを一つの軸で整理できます。
令和8年度はS造2問が必須、RC梁とSRC施工は選択
令和8年度1級建築・第一次検定の公式問題(午前)では、No.1〜6を全問解答します。鉄骨構造のNo.3と鋼・鋼材のNo.6は必須です。RC梁のNo.10はNo.7〜15から6問を選ぶ区分、SRCのダイアフラムを含む鉄骨加工のNo.28はNo.21〜30から7問を選ぶ区分です。
| 問題 | 中心テーマ | 不適当な肢 |
|---|---|---|
| No.3 | 柱脚・たわみ・細長比 | ② |
| No.6 | 鋼の性質・SN材 | ④ |
| No.10 | RC梁の配筋・貫通孔 | ④ |
| No.28 | 鉄骨加工・SRC充填性 | ① |
令和8年度の公式正答で番号を確認したら、次は「なぜ逆なのか」を式と施工場面で説明します。
S造は強度と剛性を別々に見る
強度は壊れずに耐えられる応力の大きさ、剛性は荷重を受けたときの変形しにくさです。鋼材の強度区分が上がれば、同じ断面でも降伏に対する余裕は変わります。しかし、使用時の弾性たわみを支配するヤング係数Eは、一般的な構造用鋼材の強度区分を変えてもほぼ同じです。
梁の弾性たわみ:δ ∝ 1÷(EI)
Eはヤング係数、Iは断面二次モーメント。同じ断面・荷重・支持条件なら、鋼種の強度名だけを490へ上げても、Eが同じならたわみは小さくなりません。
令和8年度No.3の②は、同じ断面と荷重条件でSN400AよりSN490Bの梁のたわみが小さいとした点が誤りです。高強度=高剛性ではありません。たわみを減らすには、断面形状を変えてIを大きくする、スパン・支持条件を見直すなど、変形を支配する要素を確認します。
柱脚は「回転拘束」と「力の出口」を確認する
柱脚は、柱の軸力・せん断力・曲げモーメントを基礎へ渡す接合部です。露出柱脚、根巻き柱脚、埋込み柱脚では、ベースプレート、アンカーボルト、根巻きコンクリート、埋込み深さなど、力を伝える部材が異なります。
令和8年度No.3は、露出柱脚より根巻き柱脚に高い回転拘束を持たせる考え方、埋込み柱脚で柱断面せいの2倍以上の埋込み深さ、主要な鋼材柱の有効細長比200以下を正しい記述として扱いました。実務では形式名だけで固定・ピンを決めず、構造図、アンカーボルト、ベースプレート、グラウト、配筋とコンクリートの納まりを一体で確認します。
鋼材名は「強さ・靱性・溶接性」を分ける
令和8年度No.6では、炭素量、焼入れ、TMCP鋼、SN490B・Cの炭素当量が問われました。一般に炭素量が増えると強さ・硬さは増す方向ですが、靱性や溶接性は低下しやすくなります。焼入れは加熱後の急冷によって硬さ・強度を高める熱処理です。
TMCP鋼は、圧延と冷却を制御して高強度と靱性・溶接性の両立を図る鋼材です。No.6の④は、SN490B・SN490Cに炭素当量の上限規定がないとした点が誤りです。B・Cには溶接性に関わる炭素当量などの規定があります。「490は強い」だけで終わらず、接合する材料としての性能を読みます。
鋼材の受入れは規格名だけで終わらない
| 段階 | 確認する記録 | 照合先 |
|---|---|---|
| 材料受入れ | 規格、鋼種、寸法、ロット、ミルシート | 構造図・材料表 |
| 製作 | 工作図、切断・孔あけ、組立て、溶接条件 | 承認図・製作要領 |
| 製品検査 | 寸法、外観、溶接部、非破壊試験 | 検査要領・受入基準 |
同じH形鋼でも、鋼種、板厚、使用部位、溶接条件を取り違えると要求性能は満たせません。刻印・識別表示と証明書、工作図上の部材記号を対応させ、加工後も材料の追跡性を保ちます。
高力ボルトは摩擦面と締付け工程を管理する
高力ボルト摩擦接合は、ボルトへ導入した軸力で接合面を強く締め付け、摩擦によって力を伝えます。ボルト本数だけでなく、摩擦面の状態、孔の精度、接触、ボルトセットの組合せ、締付け順序が性能に影響します。
現場では、一次締め、マーキング、本締めの工程を追い、共回りや締め忘れがないかを確認します。トルシア形高力ボルトはピンテールの破断だけを見て終わらず、マーキングのずれ、ナット回転、軸部・座金の状態を合わせて見ます。
溶接は「表面」と「内部」を別の検査で見る
溶接前には開先形状、ルート間隔、組立て精度、清掃、溶接材料、予熱条件を確認します。溶接後の外観検査は、割れ、アンダーカット、余盛、表面欠陥などを確認します。超音波探傷試験は、指定された完全溶込み溶接部などの内部欠陥を調べる方法です。
「超音波探傷をしたから外観検査はいらない」「溶接工の資格があるから施工条件は見なくてよい」という関係ではありません。施工要領、作業者資格、溶接条件、外観、非破壊試験、補修記録を一連の証拠として残します。
RC梁は主筋・せん断補強筋・孔を分ける
RC梁では、コンクリートが主に圧縮、主筋が主に曲げ引張、せん断補強筋がせん断ひび割れへの抵抗と主筋の拘束を担います。役割を分けると、鉄筋径、段数、間隔、貫通孔のルールを整理しやすくなります。
| 令和8年度No.10の項目 | 設問上の基準 | 現場で見るもの |
|---|---|---|
| 主筋 | D13以上、特別な場合を除き2段以下 | 径・本数・位置・あき |
| せん断補強筋 | 9mm丸鋼またはD10以上、比0.2%以上 | 径・間隔・フック・結束 |
| 補強筋間隔 | 梁せいの1/2以下かつ250mm以下 | 端部・中央部の指定間隔 |
これらは設問が前提にした基準です。実工事では構造図と適用仕様の厳しい側を確認します。鉄筋が多すぎてコンクリートを充填できない状態も避ける必要があるため、径・本数だけでなく、鉄筋相互のあきと打込み経路も見ます。
RC梁の貫通孔は2倍でなく3倍離す
令和8年度No.10の④は、孔径が梁せいの1/3の円形貫通孔を2個設けるとき、中心間隔を両孔径の平均値の2倍以上とした点が誤りです。設問で求める中心間隔は、両孔径の平均値の3倍以上です。
設備スリーブは、配筋完了後に都合のよい場所へ追加するものではありません。構造図・設備図を重ね、梁端部、主筋、せん断補強筋、孔補強、孔径、孔相互の距離を事前に調整します。現場判断で主筋や補強筋を切断して納めないでください。
かぶり厚さと鉄筋のあきは別の寸法
かぶり厚さは鉄筋の外面からコンクリート表面までの距離で、耐久性、耐火性、付着の確保に関わります。鉄筋相互のあきは、コンクリートと粗骨材が通り、締め固められる空間に関わります。
旧記事のように「屋内30mm・屋外40mm・土に接する部分60mm」を全ての部材へ一律適用するのは危険です。部位、仕上げの有無、環境、設計かぶり、施工誤差の扱いが異なるため、構造図、特記仕様書、適用する標準仕様書を照合します。
SRC造は「鉄骨+配筋+充填」の干渉を解く
SRC造は、鉄骨の周囲に鉄筋を配置し、コンクリートを一体に打ち込む構造です。単純な「S造とRC造の長所だけを足した構造」ではありません。鉄骨建方、鉄筋継手、主筋、帯筋、梁筋、ダイアフラム、型枠が同じ断面へ集まり、施工順序と充填性の調整が難しくなります。
令和8年度No.28の②は、SRCの鉄骨柱・梁接合部のダイアフラムに、コンクリートの充填性を考慮して空気孔を設ける記述です。これは適当な肢でした。空気孔やコンクリート流入孔を工作図で計画し、打込み時に鉄骨下面や接合部へ空隙を残さないことが重要です。
構造形式の比較は順位でなく管理点で行う
| 構造 | 力を渡す中心 | 施工管理の中心 |
|---|---|---|
| RC造 | コンクリートと鉄筋の付着・定着 | 配筋、型枠、打込み、締固め、養生 |
| S造 | 部材とボルト・溶接・柱脚 | 材料、製作精度、接合、建方、耐火仕様 |
| SRC造 | 鉄骨とRC部分の一体作用 | 鉄骨・配筋の干渉、打込み経路、充填 |
耐火、遮音、工期、コスト、高さを一律に順位付けすることはできません。架構、部材断面、被覆、床・壁の仕様、施工方法、調達条件で変わります。試験でも実務でも、構造名ではなく与えられた部材と条件から判断します。
S造の耐火性を「必ず被覆」と断定しない
鋼材は加熱されると強度と剛性が低下するため、要求される耐火性能に応じて、吹付け材、巻付け材、耐火板、耐火塗料、コンクリート被覆などを計画します。ただし、すべてのS造・すべての部材に同一の耐火被覆が必須とは限りません。
建物用途、規模、部位、要求耐火時間、認定仕様を確認し、材料、厚さ、下地、ピン、継目、欠損補修を管理します。「鉄は不燃だから耐火上そのままでよい」「S造なら必ず同じ厚さの被覆」という両極端を避けます。
検査は荷重経路を上流から追う
構造検査の5段階
- 構造図・特記仕様書・工作図で部材と接合を特定する。
- 材料証明と現物表示を照合し、取り違えを防ぐ。
- 隠れる前に配筋、ボルト、溶接、アンカー、開口補強を検査する。
- コンクリート充填、グラウト、耐火被覆など次工程を管理する。
- 検査記録、写真、試験結果、是正内容を部位へひも付ける。
「材料が合っている」だけでは、接合部が力を渡せるとは限りません。「完成寸法が合っている」だけでも、内部の配筋や溶接品質は証明できません。次工程で隠れる前の停止点を施工計画へ入れます。
オリジナル確認問題4問
以下は公式問題を転載せず、本記事用に作成したオリジナル問題です。
問題1:同じ断面・スパン・荷重条件の鋼梁で、SN400からSN490へ鋼種だけを変えたときの弾性たわみの説明として適切なのはどれですか。
①必ず半分になる ②ヤング係数がほぼ同じならほぼ変わらない ③必ず2倍になる ④降伏強度だけで決まる
問題2:直径200mmと300mmの円形貫通孔を同一RC梁へ設けます。中心間隔を平均孔径の3倍以上とする条件なら、最小中心間隔はどれですか。
①500mm ②600mm ③750mm ④900mm
問題3:高力ボルト摩擦接合の本締め後に、最も優先して組み合わせて確認するものはどれですか。
①塗装色だけ ②ピンテール破断だけ ③マーキングのずれ・共回り・締め忘れ ④梁の自重だけ
問題4:SRC柱梁接合部のダイアフラムに空気孔・流入孔を計画する主な目的はどれですか。
①鋼材を軽量化するだけ ②コンクリートの流動と空気の抜けを確保する ③溶接検査を省略する ④主筋を切断する
公式資料と更新方針
- 建設業振興基金「令和8年度 1級建築 第一次検定問題(午前)」:No.3・6・10・28と選択数の確認
- 令和8年度 第一次検定正答:正答番号の確認
- 令和8年度 1級建築施工管理技術検定の手引:試験制度の確認
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」:現行版・正誤表の入口
- 公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版PDF:鉄筋、コンクリート、鉄骨、耐火被覆の施工・検査
- 国土交通省「官庁営繕の技術基準」:構造設計・標準仕様書の最新版入口
公式問題の数値は設問条件を解説したものです。実工事では構造図、特記仕様書、適用するJIS・JASS、認定仕様、施工要領、検査基準の最新版を優先してください。
まとめ
- 令和8年度は鉄骨構造No.3と鋼材No.6が必須、RC梁No.10と鉄骨加工No.28が選択です。
- 鋼材の強度を上げても、EとIが同じなら梁の弾性たわみは小さくなりません。
- SN490B・Cには炭素当量の上限規定があり、強さと溶接性を分けて考えます。
- RC梁の二つの貫通孔は、中心間隔を平均孔径の3倍以上とします。
- S造は材料・ボルト・溶接・柱脚、RC造は配筋・打込み、SRC造は干渉と充填を重点管理します。
- 構造形式の名前だけで耐火、工期、コスト、適用高さを一律に順位付けしません。
木造・基礎・地盤の続きは「1級建築の各種構造②」、熱橋・結露は「1級建築の環境工学②」、第一次検定の学習順は「1級建築施工管理技士の独学勉強法」へ進んでください。
最後の自己点検
白紙に「荷重→部材→接合部→基礎」を書き、①SN490でもたわみが減らない理由、②RC梁の孔間隔、③SRCダイアフラムの空気孔を一行ずつ説明してください。材料名でなく力の流れから答えられれば完成です。