1級土木(第一次)

1級土木の上下水道|管路更新・更生・小口径管推進の判断軸

1級土木の上下水道|管路更新・更生・小口径管推進の判断軸

結論:上下水道は「水の流れ」と「既設管をどう直すか」を分けて考える

1級土木の上下水道は、浄水場の用語だけを覚える分野ではありません。原水を処理して届ける流れ、汚水・雨水を排除する流れ、老朽管を更新・更生する構造、小口径管を地中へ通す施工条件をつなげて判断します。令和8年度の公式問題Aでは、上水道管の更新・更生、下水道管きょ更生、小口径管推進がNo.51〜53に並びました。

令和8年度問題は管路の「改築・施工」を3問で確認した

令和8年度1級土木・第一次検定の公式問題Aを学習目的で分類すると、上下水道に直接関係する出題は次の3場面です。ここでは問題文を転載せず、何を見分ける問題だったかを整理します。

問題 主題 中心となる判断
No.51 上水道管の更新・更生 新管、既設管、充填材の関係
No.52 下水道管きょ更生 工法名と構築方法の対応
No.53 小口径管推進 地盤・地下水と切羽安定

No.21〜54は34問から10問を選ぶ区分で、11問以上の解答は減点と問題冊子に明記されています。上下水道3問を必ず選ぶという意味ではありません。最新問題で正答根拠を説明できるかを測り、他分野と比べて選択候補にするか決めます。全体の区分は「1級土木 第一次検定の出題構成と選択戦略」で確認してください。

最初に上水道と下水道の流れを1本にする

上水道

取水→導水→浄水→送水→配水。原水を水質基準に適合させ、必要な水量と圧力で利用者へ届けます。

下水道

排水設備→管きょ→ポンプ場→処理場→放流。汚水処理と雨水排除により生活環境・水質・浸水安全を守ります。

覚える順序は施設名の羅列ではなく、どこからどこへ、何をどの状態に変えて送るかです。たとえば上水道の「導水」は取水施設から浄水場まで原水を運ぶ区間、「送水」は浄水後の水を配水池などへ送る区間です。名前の前後関係が分かれば、誤った順序を見抜きやすくなります。

浄水方法は処理速度だけで決めない

浄水方法には消毒のみ、緩速ろ過、急速ろ過、膜ろ過などがあり、必要に応じて高度浄水処理を組み合わせます。国土交通省の高度浄水処理に関する技術資料は、原水水質と浄水水質の管理目標に加え、施設規模、運転制御、維持管理の水準、設置スペース、総費用などを総合して選ぶと整理しています。

方式 処理の核 判断時に見る条件
緩速ろ過 砂層表面の生物作用とろ過 原水水質、必要面積、維持管理
急速ろ過 凝集・沈殿後の砂ろ過 薬品注入、洗浄、運転管理
膜ろ過 膜による固液分離 前処理、膜洗浄、更新、動力

「大規模なら必ず急速」「緩速なら薬品は一切不要」のような絶対表現は避けます。試験では、一つの特徴が正しくても、適用条件を外して一般化した文が誤りになり得ます。

合流式と分流式は雨天時の行き先で見分ける

国土交通省「下水道施設の構成と下水の排除方式」によると、分流式は汚水と雨水を別の管きょで排除します。合流式は1本の管きょで両方を扱うため施工しやすい一方、雨天時に一定量を超えた汚水と雨水が公共用水域へ放流される構造です。

方式 管きょ 雨天時の注意
分流式 汚水管と雨水管を分ける 誤接続・雨天時浸入水を防ぐ
合流式 汚水と雨水を1本で流す 越流水量と汚濁負荷を抑える

分流式を「雨天時の問題がゼロ」と言い切るのも不正確です。汚水管への雨水の誤接続や、継手・マンホールからの浸入水があれば、雨天時に汚水量が増えます。方式名から利点だけを選ぶのではなく、実際の水の流れを追ってください。

更新・更生・修繕は目的と構造が違う

老朽管対策の問題は、まず言葉の違いを整理します。名称が似ていても、管が荷重に耐える仕組みと期待する期間が違います。

考え方 何を変えるか 確認の中心
更新 新しい管へ置き換える 新管の性能、管径、ルート
更生 既設管内に新たな管・層を構築 既設管調査、構造形式、品質
修繕 局部的な不具合を回復 欠陥位置、範囲、再発原因

呼び方の細部は事業者の基準で確認します。試験で大切なのは、「既設管の強度を期待するのか」「更生材だけで自立するのか」「既設管と一体化するのか」を文中から読み取ることです。

上水道管は残存性能と給水継続から工法を選ぶ

水道維持管理指針の抜粋資料は、更新工法を機能の低下した管を新管へ取り替える方法、更生工法を既設管内面へ材料を被覆して機能を回復させる方法として整理しています。更生を採用するには、既設管の管体・継手が更生後も必要期間にわたり耐えられることが前提です。

既設管内布設では、既設管をさや管として新管を挿入し、間隙へモルタルなどを充填して重層構造にします。開削を減らせる一方、新管の外径分だけ有効内径が小さくなる、曲がりや変形で挿入できない、発進・到達部が必要になるという条件があります。

現場では通水を止められるかが先に来る

病院や避難所へ給水する管路なら、工法の施工性だけでなく、断水範囲、仮設配管、切替手順、洗浄・消毒、水圧試験まで計画します。「掘らずに直せるから最適」ではなく、給水を維持し、衛生と水密性を確認して復旧できるかが判断の中心です。

水道施設設計指針の抜粋資料も、既設管路の状況を調査し、所要管径、水密性、耐久性、施工性を満たす管種を選ぶよう示しています。管内面が平滑なら流れの抵抗は小さくなりますが、それだけで必要流量を満たすとは限りません。更新後の内径と計画流量を確認します。

下水道更生は自立管・複合管・二層構造管を分ける

国土交通省の管きょ更生工法に関する基準資料では、構造形式を次のように区別しています。

  • 自立管:既設管の強度を期待せず、更生材だけで外力に抵抗する構造。
  • 複合管:既設管と更生材が一体となって外力に抵抗する構造。
  • 二層構造管:強度を持つ既設管を前提に、主として防食・止水などの機能を付加する構造。

「古い管の内側へ何かを入れれば全部同じ更生」ではありません。ひび割れ、腐食、変形、浸入水、継手ずれ、流下能力を調査し、既設管にどこまで構造性能を期待できるかを決めてから設計します。

反転・形成・製管・鞘管は作り方を映像で覚える

工法 管内で起きること 混同防止の言葉
反転 樹脂含浸材を反転させて挿入し硬化 裏返しながら進む
形成 ライナー等を引き込み、拡張・圧着して硬化 引込み後に形を作る
製管 帯状材等を組み、間隙へ充填材を入れる 管内で管を組み立てる
鞘管 工場製作した管を既設管内へ挿入 完成した新管を入れる

令和8年度No.52は、工法名と構築方法の組合せを見抜く問題でした。名称だけでなく、材料が反転する、引き込まれて膨らむ、管内で組まれる、完成管として入るという動きを頭に描くと判断できます。

更生工事は施工前調査から完成検査まで一本で管理する

  1. 調査:管径、延長、段差、曲がり、取付管、浸入水、障害物、劣化状態を確認する。
  2. 前処理:流量を制御し、洗浄、障害物除去、止水などを行う。
  3. 材料確認:製造・保管・使用期限、温度条件、必要量を照合する。
  4. 施工:挿入、反転、製管、硬化、充填を工法ごとの管理値で記録する。
  5. 完成確認:外観、厚さ、強度、水密性、取付管、流下断面などを仕様に応じて確認する。

更生材を入れれば終わりではありません。施工前に除去しなかった突起は仕上がりを傷め、硬化・充填が不足すれば構造性能に影響します。工法名と同時に、どの工程の不備がどの性能を失わせるかを覚えます。

小口径管推進は地盤・地下水・周辺影響で選ぶ

小口径管推進は、発進立坑から先導体と管を地中へ押し進める非開削施工です。路面を全線開削しにくい道路横断などで有効ですが、「交通規制が少ないから安全」という単純な工法ではありません。切羽の崩壊、地盤変位、推進力、方向ずれ、既設埋設物への影響を管理します。

方式 掘削・排土の考え方 特に確認する条件
オーガ スクリューで掘削土を搬出 粘着、閉塞、先端抵抗
ボーリング 開放された先端から掘削 地下水、砂質地盤、補助工法
圧入 排土せず周囲へ圧密 土質、隆起、近接構造物
泥水 泥水で切羽を支え、送排泥 透水性、泥水品質、逸泥

令和8年度No.53の本質は、工法名よりも地盤条件→起こる現象→必要な対策の対応です。たとえば先端が開放された方式を地下水位以下の砂質地盤へ使うなら、切羽安定のための補助工法を検討します。圧入方式なら、排土しないことで周辺地盤や近接構造物へ与える影響を見ます。

現場例:交通量の多い道路下へ汚水管を通す

幅員の広い幹線道路を横断して、新しい汚水管を接続する場面を考えます。昼間の全面開削は難しく、地下水位は管底より高い。近くにはガス管と通信管があり、沿道建物もあります。

  1. 路線調査:埋設物、地盤、地下水、必要勾配、立坑位置を同じ平面・縦断図で確認する。
  2. 工法比較:開削、推進、既設管利用を交通規制・施工延長・管径・曲線条件で比較する。
  3. 切羽安定:砂質地盤と地下水に対応できる方式、補助工法、泥水・排土計画を決める。
  4. 周辺管理:路面・建物の変位、推進力、方向、排土量、地下水を記録する。
  5. 接続確認:到達位置、管底高、勾配、水密性、マンホールとの接続を確認する。

この例では「推進工法なら交通を止めない」という一文だけでは施工計画になりません。立坑部の規制は残り、埋設物との離隔、地下水処理、施工誤差の許容範囲も必要です。地盤と地下水の基礎は「1級土木の軟弱地盤対策・法面保護」、シールドの切羽管理は「1級土木のトンネル工」へつなげて復習できます。

誤文は「対象・機構・条件・結果」の4点で切る

上下水道の長い選択肢は、次の順に区切ると読みやすくなります。

1. 対象
上水管か下水管か。新管か既設管か。
2. 機構
挿入、反転、圧着、製管、圧入のどれか。
3. 条件
管径、曲線、地盤、地下水、既設管強度。
4. 結果
何が荷重を負担し、何を回復するか。

工法の説明が前半だけ正しくても、後半の「流れの抵抗が大きい」「地下水条件を問わない」「既設管の強度を必ず利用する」が食い違えば誤文です。正しい名詞を探すより、因果関係が最後までつながるかを確認します。

7日間で上下水道を選択候補にする

作るもの 完了条件
1 上水・下水フロー図 水の行き先を説明できる
2 更新・更生・修繕の比較 既設管の役割を区別できる
3 更生4工法の動作図 工法名を隠して判定できる
4 推進方式の条件表 地盤・地下水と結べる
5 令和8年度No.51〜53の根拠メモ 全肢の誤りを説明できる
6 別年度の誤答分類 4点分解で復習できる
7 問題Aの選択シミュレーション 10問を迷わず確定できる

固定の勉強時間や周回数ではなく、説明できる成果物を基準にします。独学全体の組み立て方は「1級土木施工管理技士の独学勉強法」も参照してください。

よくある疑問

浄水処理の数値はすべて暗記しますか?

先に処理目的と順序を理解します。速度や水質などの数値は、適用条件と出典を確認できるものに絞ってください。出典や条件のない固定値は、施設ごとの設計条件と混同しやすくなります。

上下水道3問は本番で必ず選ぶべきですか?

必ずではありません。令和8年度はNo.21〜54の34問から10問を選ぶ区分でした。年度ごとに配置や主題は変わるため、公式問題で他分野と正答率・判断時間を比べます。

推進工法とシールド工法は同じですか?

どちらも非開削施工に使われますが、設備、覆工、管の構築方法、適用径・延長などが異なります。「地面を全面開削しない」という共通点だけで同じ工法として扱わないでください。

理解度チェック

次の問題は、公式問題を転載せず本記事用に作成したオリジナル問題です。

Q1. 既設管内へ完成した新管を挿入し、間隙へ充填材を入れる考え方として最も近いものは?

①反転 ②製管 ③既設管内布設 ④表面塗装

正解:③。既設管をさや管として新管を挿入します。必要内径、曲がり、間隙充填、発進・到達条件を確認します。

Q2. 下水道更生で、帯状材などを既設管内で組み立てる工法は?

①形成 ②製管 ③反転 ④開削

正解:②。製管工法は管内で更生管を組み、必要に応じて既設管との間隙へ充填材を入れます。

Q3. 地下水位以下の砂質地盤で、先端が開放された推進方式を検討するとき最初に重視するものは?

①塗装色 ②切羽安定と補助工法 ③マンホールふたの模様 ④浄水薬品

正解:②。地下水と砂質地盤では切羽が不安定になり得るため、適用可能性と補助工法を検討します。

Q4. 令和8年度問題AのNo.21〜54で解答する数は?

①8問 ②10問 ③12問 ④34問すべて

正解:②。34問から10問を選びます。11問以上解答すると減点されるため、知識と同時に選択数を管理します。

確認に使った一次情報

まとめ

  • 令和8年度は、上水道管更新、下水道管きょ更生、小口径管推進がNo.51〜53に出題されました。
  • 更新・更生・修繕は、既設管に期待する性能と新しく構築する部分で分けます。
  • 反転・形成・製管・鞘管は、材料が管内でどう動くかを映像で覚えます。
  • 小口径管推進は、地盤・地下水・近接条件と切羽安定を一組で判断します。
  • 問題AのNo.21〜54は34問から10問。選択数の管理も得点条件です。

次は「1級土木の共通工学」で測量・契約・機械電気の横断分野を整理し、問題Aの選択候補を増やしてください。

最後の自己点検

工法名を隠しても「既設管と更生材の役割」「管内での構築方法」「地盤と地下水への対策」を説明できるか確認してください。説明できれば、長い誤文でも一部の用語に引っ張られず判断できます。

-1級土木(第一次)