1級建築(第一次)

1級建築の構造力学|3ヒンジ・断面二次モーメント・M図【2026年】

1級建築の構造力学|3ヒンジ・断面二次モーメント・M図【2026年】では、令和8年度の公式3問題を、図の観察、式、単位、検算の順で解き直します。

先に結論

  • No.5は必須の3ヒンジラーメン。全体の釣合いに、内部ヒンジまわりのモーメント0を加えます。
  • No.11は中空断面の断面二次モーメント。外側の長方形−内側の長方形で74a⁴です。
  • No.12は両側に張出しを持つ梁の曲げモーメント図。反力→せん断力→曲げモーメントの順で描きます。
  • 令和8年度は各問題1点です。旧記事にあった「計算だけ高配点」という説明は使いません。

公式問題の図や選択肢は転載しません。受験者は公式PDFを横に開き、この記事の式と照合してください。答えだけでなく、図のどこから式を作ったかを説明できる状態を目標にします。

令和8年度は3問を同じ「力の流れ」で解く

午前No.1〜6は全問解答で、3ヒンジラーメンのNo.5は必須です。No.7〜15は9問から6問を選ぶ区分で、その中に断面二次モーメントのNo.11と曲げモーメント図のNo.12があります。指定数を超えて解答すると減点です。

問題 位置 判断の中心
No.5 必須 全体+内部ヒンジ
No.11 選択区分 外側−空洞
No.12 選択区分 反力→Q→M

3問は別々に見えますが、共通するのは「荷重を支点まで追い、部材のどこに曲げが生じるか」を読むことです。公式を思い出せないときも、力の釣合いと単位に戻れます。

最初に正方向と単位を紙へ書く

計算を始める前に、右向き・上向きを正、反時計回りを正など、自分が使う符号を図の余白へ書きます。途中で符号を変えなければ、負の答えは「仮定した矢印と反対向き」と読めます。

単位例 意味
反力・せん断力 kN
曲げモーメント kN・m 力×距離
断面二次モーメント mm⁴・a⁴ 断面形状の曲げにくさ

断面二次モーメントの答えがa³になった、曲げモーメントがkNだけになった、という場合は式の段階で誤っています。単位は計算後の飾りではなく、途中の検算道具です。

No.5は内部ヒンジで架構を左右に分ける

3ヒンジラーメンには、両脚の支点に加えて梁途中の内部ヒンジがあります。ヒンジは回転できるため、その点で曲げモーメントを伝えません。つまり、内部ヒンジまわりのモーメントは0です。

4段階

  1. 架構全体を一つの物体として、ΣX=0、ΣY=0を立てる。
  2. 内部ヒンジで左側と右側に分ける。
  3. 左側または右側について、ヒンジまわりのΣM=0を立てる。
  4. 求めた反力を全体の式へ戻し、力の合計が0か検算する。

内部ヒンジに未知の水平力・鉛直力が働いていても、ヒンジを中心にモーメントを取れば腕の長さが0なので式から消えます。これがNo.5を少ない式で解く鍵です。

令和8年度No.5を式で検算する

公式No.5は、幅6m・高さ6mの3ヒンジラーメンへ、水平・鉛直の9kN荷重が作用する図です。支点Bの反力を右向きHB、上向きVBとして計算します。

全体の釣合いに加え、内部ヒンジDで左右へ分けてモーメントを取ると、次の関係を作れます。

全体:HA+HB+9=0、VA+VB−9=0

左側・Dまわり:6HA−2VA+18=0

右側・Dまわり:6HB+4VB−18=0

連立すると、HB=−5kN、VB=+12kNです。水平反力の負号は、図で仮定された右向きと反対、つまり左向きに5kNという意味です。鉛直反力は上向き12kNです。正答肢は1と確認できます。

VBが外力9kNより大きくても、直ちに誤りではありません。もう一方の支点には下向き3kNの反力が生じ、全体では鉛直方向が釣り合います。反力一つだけで「荷重より大きいから間違い」と判定しないでください。

断面二次モーメントは幅×高さ³÷12

長方形断面の図心を通る水平軸まわりの断面二次モーメントは、次の式です。

長方形の断面二次モーメント

I = b h³ ÷ 12

b:軸と平行な幅、h:軸に直角な高さ

高さが3乗で効くため、bとhを逆にすると答えは大きく変わります。どの軸まわりかを先に見て、軸に直角な寸法をhへ入れます。

No.11は外側から空洞を引いて74a⁴

令和8年度No.11は、外側が幅5a・高さ6a、中央の空洞が幅3a・高さ4aの中空断面です。求めるX−X軸は両長方形の図心を通るため、平行軸の移動は不要です。

外側:5a×(6a)³÷12=90a⁴

空洞:3a×(4a)³÷12=16a⁴

中空断面:90a⁴−16a⁴=74a⁴

正答肢は3です。「外枠の面積−空洞の面積」ではなく、断面二次モーメント同士を引きます。空洞が図心からずれている問題では平行軸の定理が必要ですが、この図は中心が一致しています。

曲げモーメント図は反力から描く

曲げモーメント図だけを見比べると、頂点位置や傾きを勘で選びやすくなります。先に反力を求め、区間ごとのせん断力Qを出し、そのQを区間長さだけ積み上げてMを求めます。

集中荷重だけの区間ではQは一定なので、M図は直線です。等分布荷重がある区間ではQが直線的に変わるため、M図は曲線になります。この関係を知れば、形だけで明らかに違う選択肢を外せます。

図を描く順序

支点反力 → Qの値と飛び → Mの端点・支点値 → Qの符号に合わせてMの傾きをつなぐ。

No.12はAで−4、Bで−6、両端0

令和8年度No.12は、支点A・Bから左右へ2mずつ張り出す梁です。左端Cに2kN、右端Dに3kNの下向き荷重があります。鉛直反力をRA、RBとすると、Aまわりのモーメントと鉛直力の釣合いから、RA=1kN、RB=4kNです。

区間・点 Q M
C→A −2kN 0→−4kN・m
A→B −1kN −4→−6kN・m
B→D +3kN −6→0kN・m

公式問題は曲げモーメントを材の引張側に描く指定です。両張出しの下向き荷重による負曲げなので図は梁の上側、B位置が最大となり、正答肢は1です。C・Dの自由端でMが0に戻ることも検算になります。

オリジナル例題:反力は距離比で決まる

スパン8mの単純梁で、左支点から3mの位置に12kNの集中荷重があるとします。右反力RBは、左支点まわりのモーメントから求めます。

RB×8−12×3=0 → RB=4.5kN

RA+RB−12=0 → RA=7.5kN

荷重点のM=RA×3=22.5kN・m

荷重が左支点に近いので、左反力のほうが大きくなります。計算前にこの大小関係を予想しておくと、距離を逆に掛けたミスに気付けます。

実務では計算結果を部材と接合へ戻す

反力は柱脚・基礎・支承へ伝わる力、せん断力と曲げモーメントは梁や柱の断面・配筋・接合を決める基礎情報です。断面二次モーメントIは材料のヤング係数Eと組み合わさり、曲げ剛性EIとして変形に関係します。

ただし、試験の静定計算だけで実建物を設計できるわけではありません。国土交通省の建築構造設計基準も、建物の規模、構造形式、荷重・外力、要求性能に応じて適切に構造計算する考え方を示しています。施工管理では、構造図の部材、接合、開口、施工時荷重を確認し、設計条件を変える提案は構造設計者へ戻します。

5分でできる答案点検

  • 荷重と反力をすべて図へ書いたか。
  • 距離はモーメントを取る点から測ったか。
  • 内部ヒンジのM=0を使ったか。
  • 断面二次モーメントの高さを3乗したか。
  • 中空断面は外側から空洞を引いたか。
  • 自由端・ヒンジ・単純支点など、Mが0になる点を確認したか。
  • 選択区分で指定数を超えてマークしていないか。

途中式を長く書くより、符号、単位、M=0点、全体のΣX・ΣYという短い検算を残すほうが見直しに役立ちます。

オリジナル確認問題4問

以下は公式問題を転載せず、本記事用に作成したオリジナル問題です。

問題1:3ヒンジラーメンを内部ヒンジで左右に分ける主な利点はどれですか。

①ヒンジの曲げモーメント0を使える ②すべての反力が0になる ③単位が不要になる ④荷重を消せる

問題2:幅2a、高さ5aの長方形の、図心を通る水平軸まわりの断面二次モーメントはどれですか。

①10a² ②25a³ ③125a⁴/6 ④250a⁴

問題3:集中荷重だけが作用し、荷重も支点反力もない梁区間の曲げモーメント図はどうなりますか。

①必ず円弧 ②せん断力一定なので直線 ③必ず水平 ④描けない

問題4:反力を仮に右向きとして計算した結果が−5kNでした。適切な読み方はどれですか。

①力が存在しない ②右向き5kN ③左向き5kN ④単位をmへ変える

公式資料と更新方針

公式問題の図・選択肢は建設業振興基金のPDFで確認してください。本記事は2026年7月31日時点の出題と正答を基にしており、令和9年度問題・試験要領・構造基準改定時に再確認します。

まとめ

  • 令和8年度はNo.5が必須、No.11・12が9問から6問を選ぶ区分で出題されました。
  • 3ヒンジラーメンは全体の釣合いと内部ヒンジのM=0を組み合わせます。
  • No.5の支点B反力はHB=−5kN、VB=+12kNです。
  • No.11は外側90a⁴から空洞16a⁴を引き、74a⁴です。
  • No.12はRA=1kN、RB=4kN、MはC=0、A=−4、B=−6、D=0です。
  • 符号、単位、M=0点、全体の力の合計で短く検算します。

部材と接合の意味は「1級建築の各種構造①」、基礎と地盤は「1級建築の各種構造②」、全72問の選択順は「1級建築 第一次検定の攻略法」へ進んでください。

最後の自己点検

白紙に「ΣX=0、ΣY=0、ΣM=0、ヒンジでM=0、I=bh³/12」と書き、No.5・11・12のどこで使うかを対応させてください。式と図を結べれば完成です。

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