1級建築の鉄骨工事|加工・高力ボルト・溶接・建方・耐火被覆【2026年】では、令和8年度No.28を入口に、工場加工から現場建方、接合、検査、耐火被覆までを一つの品質管理として整理します。
最初に押さえる結論
- 令和8年度は午前の選択No.28に鉄骨の加工・組立が出題され、正答は①でした。
- 厚さ13mm以下の鋼板は条件付きでせん断切断できますが、16mm鋼板を同じ扱いにはできません。
- 高力ボルトは、摩擦面→セットの保管→一次締め→マーキング→本締め→締付け後確認までを連続して管理します。
- 溶接は、技能資格だけでなく、開先・清掃・気象・予熱・入熱・パス間温度・外観・内部欠陥の記録が必要です。
- 建方中は未完成の構造体です。本接合完了まで、風・自重・施工荷重に耐える仮固定と組立順序を計画します。
鉄骨工事では、工場で正確に製作された部材でも、運搬時の変形、摩擦面の汚れ、締付け不足、溶接条件、建方中の風、耐火被覆の欠損によって品質が変わります。「ボルト」「溶接」「建方」を別々に暗記せず、力を伝える接合部を完成させる順序で学ぶことが大切です。
本記事は、建設業振興基金の令和8年度問題・正答肢と、国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」を照合しています。実工事では、構造図、鉄骨工作図、施工計画書、溶接施工要領書、建方計画、認定仕様を優先してください。
更新・確認日:2026年7月31日。公式問題の文章は転載せず、問われた判断軸を要約しています。
令和8年度No.28は選択区分の1問
午前No.21〜30は10問から7問を選ぶ区分で、No.28は鉄骨の加工・組立を扱う四肢択一、各1点でした。令和8年度No.28の正答は①です。
不適当とされたのは、板厚16mmの鋼材をせん断で切断する判断でした。令和7年版仕様書7.3.5では、せん断切断が可能なのは厚さ13mm以下の鋼板であり、主要部材の自由端・溶接接合部にはせん断縁を使いません。
鉄骨工事は製作から耐火被覆までつながる
| 段階 | 主な管理 | 後工程への影響 |
|---|---|---|
| 工場製作 | けがき、切断、孔、組立、溶接 | 現場での納まり・精度 |
| 搬入・建方 | 変形、揚重、仮固定、建入れ | 本接合時の応力・安全 |
| 本接合 | 高力ボルト、現場溶接、検査 | 力の伝達・変形性能 |
| 仕上げ | 防錆補修、耐火被覆、取合い | 耐久性・耐火性能 |
現場で孔が合わないから無断で拡大する、建入れが合わないから本接合で引き寄せる、といった修正は、製作・建方の誤差を接合部へ押し込む行為です。どの段階で生じた差かを切り分けます。
せん断切断は13mm以下でも条件がある
鋼材の切断面は材軸に垂直とし、ガス切断は原則として自動ガス切断です。厚さ13mm以下の鋼板はせん断切断できますが、主要部材の自由端または溶接接合部にはせん断縁を用いません。切断面に有害な凹凸、まくれ、切欠き、スラグを残さないことも必要です。
「13mm以下ならどこでもせん断可能」ではありません。板厚に加え、切断面が力を受ける位置か、溶接する位置か、仕上げ後の欠陥が残らないかまで確認します。No.28の16mmは、適用できる板厚を超えています。
SRCのダイアフラムは充填性を見る
No.28では、鉄骨鉄筋コンクリート造の柱梁接合部で、ダイアフラムにコンクリートの充填性を考えた空気孔を設ける扱いが適当な肢でした。SRCは鉄骨と鉄筋が密集し、コンクリートの流路と空気の逃げ道が不足しやすい部分です。
孔は「空気を抜けばよい」と現場で自由に追加するものではありません。構造性能、溶接、コンクリート流動、振動機の挿入、検査方法を工作図で確認します。構造と施工の取合いを工場製作前に解決するのが重要です。
加熱曲げは青熱脆性域を避ける
No.28では、鋼材の加熱曲げを青熱脆性域を避けた赤熱状態で行う判断が適当な肢でした。令和7年版仕様書も、曲げ加工を鋼材の所定の機械的性質を損なわない方法で行うよう求めています。
温度が高ければ加工しやすい、低ければ安全という単純な関係ではありません。鋼種、板厚、曲げ半径、加熱・冷却方法、材質への影響を施工要領で決めます。局部を不用意に加熱して矯正すると、残留応力や材質変化を招きます。
組立溶接の40mmは板厚区分と溶接法を伴う
No.28では、板厚12mmで、本溶接をガスシールドアーク溶接する箇所の組立溶接を最小40mmとする判断が適当でした。令和7年版仕様書の表7.6.1では、被覆・ガスシールド・セルフシールドアーク溶接の場合、板厚6mm以下は30mm、6mm超は40mmです。
本溶接がサブマージアーク溶接なら同じ板厚区分でも50mm・70mmです。数字だけでなく「板厚」「本溶接の方法」「組立溶接」を組にします。短い仮付けを多数置けばよいわけではなく、欠陥を避け、部材形状を保持できる間隔で施工します。
高力ボルト摩擦接合は面で力を伝える
高力ボルト摩擦接合は、ボルト軸を直接せん断させる考え方ではなく、ボルト張力で接合面を締め付け、その摩擦で力を伝えます。そのため、ボルトだけでなく摩擦面の状態が品質の一部です。
一般の高力ボルト摩擦面は、すべり係数0.45以上を確保します。ミルスケールを除去して一様に錆を発生させる方法、またはブラスト処理で表面粗度50μmRz以上を確認する方法があります。油、塗料、じんあい、浮き錆は組立前に除去します。
溶融亜鉛めっきは0.4と処理方法を分ける
溶融亜鉛めっき高力ボルト接合では、摩擦面のすべり係数は0.4以上で、ブラスト処理またはりん酸塩処理など特記に沿って確保します。一般の高力ボルト摩擦面の0.45と混同しないでください。
めっきは防錆に有効ですが、摩擦面を無処理のまま使えるという意味ではありません。めっき後の摩擦面処理、傷の補修、溶接面へのめっき付着防止まで工程を分けます。
ボルトセットは使用直前に開封する
高力ボルトのセットは未開封で搬入し、使用直前に包装を開けます。開封して使わなかったセットは再包装して保管します。試験や締付け機器の調整に使ったセットは、本接合にも再試験にも使いません。
ボルト、ナット、座金は一つのセットです。現場で別ロットの部品を寄せ集めると、確認済みの締付け性能を再現できません。保管場所、開封時刻、使用箇所、ロットを記録します。
締付けは一次・マーク・本締めの順
- 仮ボルト:板を密着させ、孔と部材の状態を確認する。
- 一次締め:ボルト径に応じた一次締付けトルクでナットを回す。
- マーキング:ボルト・ナット・座金・母材に連続した印を付ける。
- 本締め:一群の中央から周辺へ進め、所定のボルト張力を得る。
トルシア形は専用レンチでピンテールが破断するまで締めます。JIS形はトルクコントロール法またはナット回転法です。「すべてトルク値だけで完了」とまとめず、ボルト形式に応じた締付け・確認方法を使います。
本締め後は破断・マーク・回転・余長を見る
トルシア形は、ピンテール破断、共回り・軸回りの有無、ナット回転量、ボルト余長を確認します。ボルト余長はねじ1山から6山の範囲です。不合格のセットは新しいものへ交換し、一度使ったセットは再使用しません。
ピンテールが破断しただけでは、部材密着や共回りまで保証しません。マーキングは締付けの前後をつなぐ記録です。確認結果を残し、監督職員の検査を受けます。
溶接前は開先・清掃・資格・材料をそろえる
溶接前には、開先角度、ルート間隔、食違い、ずれ、組立溶接、エンドタブ、予熱、技能資格者を確認します。水分、油、スラグ、塗料、錆、溶融亜鉛めっきなど溶接に支障となるものを除去します。
吸湿・錆・被覆の剝離がある溶接材料は使いません。吸湿の疑いがある材料は種類に合った条件で乾燥します。良い溶接は、アークを出してからではなく、開先と材料の準備で決まります。
気温・雨・風は溶接条件の一部
作業場所が-5℃未満なら溶接を行いません。-5℃以上5℃以下では、溶接線から100mm程度の範囲を適切に加熱します。母材が雨雪でぬれている、溶接へ影響する風がある場合も、適切な対策なしでは施工しません。
風はシールドガスを乱し、低温・水分は割れのリスクを高めます。テントで囲えば無条件に施工できるのではなく、母材温度、乾燥、風速、予熱、パス間温度を確認し記録します。
溶接中は入熱とパス間温度を管理する
溶接作業中は、溶接順序、姿勢、棒径・ワイヤ径、電流、電圧、入熱、パス間温度、層間のスラグ、裏はつりを確認します。入熱が不足すれば溶込み・融合不良、過大なら熱影響部の材質や変形へ影響します。
アンダーカット、ピット、割れなどの名称を覚えるだけでなく、「施工中のどの条件を直せば再発を防げるか」を考えます。補修は欠陥部を隠す作業ではなく、範囲を確認して除去し、再溶接・再検査する工程です。
検査は着手前・作業中・完了後の3段階
| 時点 | 代表確認 | 目的 |
|---|---|---|
| 着手前 | 開先、清掃、予熱、資格 | 欠陥を作らない |
| 作業中 | 電流、電圧、入熱、温度 | 施工条件を再現する |
| 完了後 | 外観、寸法、内部欠陥 | 要求品質を確認する |
外観試験、超音波探傷試験、浸透探傷試験、磁粉探傷試験は、対象と特記に応じて使います。「完全溶込みはすべて同じ割合でUT」と一律化せず、試験箇所・方法・受入れ基準を設計図書と施工計画で確認します。
建方前はアンカーボルトと柱脚を確認する
アンカーボルトは型板で基準墨へ合わせ、位置・高さ・突出長さ・ねじの状態を確認します。ねじ部は損傷、錆、汚れ、コンクリート付着を防ぐため養生します。柱底均しモルタルでは、コンクリート面のレイタンスを除去し目荒しを行います。
搬入した鉄骨に曲がり・ねじれがあれば、建方前に修正します。吊上げ時に変形しやすい部材は補強し、吊り姿勢、重心、玉掛け位置、クレーン能力を計画します。
仮ボルトは接合形式で本数が変わる
- 一般の仮ボルトは、1群の1/3以上かつ2本以上です。
- 柱梁接合部の混用接合・併用継手は、1群の1/2以上かつ2本以上です。
- 柱・梁を現場溶接する場合、エレクションピース等の仮ボルトは高力ボルトを全数締めます。
旧記事の「溶接接合は一律1/2」とまとめると、現場溶接接合の全数条件を落とします。本接合方式と仮設接合の役割を工作図で確認します。
建方中は完成前の風荷重に耐えさせる
建方は、本接合完了まで風荷重、自重、施工荷重に対して安全な組立順序とします。本接合前に建入れ精度を計測して直し、完了後は形状・寸法精度を確認します。精度はJASS 6の現場検査基準によります。
旧記事にあった柱の倒れや建物全体の許容差を、条件なしの三つの数字として残していません。節、部位、測定区分で限界許容差・管理許容差が異なるためです。現場では適用表と測定計画を照合します。
耐火被覆は認定仕様を完成させる
耐火被覆には、耐火材吹付け、耐火板張り、耐火材巻付け、ラス張りモルタル塗り、耐火塗料などがあります。種類、材料、工法、耐火性能は特記によります。吹付け・板張り・巻付け・耐火塗料は、建築基準法に基づく認定仕様で施工します。
厚さだけでなく、付着・取付け強度、貫通孔、デッキプレートと梁の隙間、主要部材の取付け金物まで連続して被覆します。「鋼材は約550℃で強度半減するから全鉄骨へ同じ被覆」という旧説明では、要求耐火時間、部位、認定構成、取合いを判断できません。
防錆塗装と接合面・耐火被覆面を混同しない
高力ボルト摩擦面、コンクリートへ密着・埋込みされる部分、密閉断面内面などは、特記がなければ一般の錆止め塗装範囲から外れます。現場溶接部の両側100mm程度と超音波探傷に支障する範囲は、試験完了後に塗装します。
耐火被覆材が接着する面の塗装範囲と塗料種別も特記で確認します。防錆のため全面を先に塗ると、摩擦接合・溶接・探傷・耐火被覆の性能を妨げる場合があります。
現場例:柱梁接合部を引渡すまで
柱と梁を建てた後、仮ボルトで形を保持し、建入れを測定して直します。高力ボルト部は摩擦面と肌すきを確認し、一次締め、マーキング、本締め、回転・余長を記録します。現場溶接部は気象と開先を確認し、施工中の入熱・温度を記録し、完了後の外観・内部欠陥を検査します。
その後、傷んだ防錆面を補修し、認定仕様どおり耐火被覆を施工します。接合部は「本締め終了」や「溶接終了」だけでは完成せず、検査・補修・被覆の記録までつながって初めて次工程へ引き渡せます。
旧記事の断定を現行仕様へ直す
- トルシア形が常に最も広く使用:採用形式は設計・施工条件で確認します。
- 摩擦面はすべて0.45:溶融亜鉛めっき高力ボルトは0.4以上です。
- 溶接接合の仮ボルトは一律1/2:現場溶接のエレクションピース等は高力ボルト全数です。
- 柱倒れは三つの固定数値:適用するJASS 6の測定区分と許容差で判断します。
- 550℃で強度半減:耐火性能は部位と認定仕様で確認します。
- 工法は速さ・安さで順位付け:要求性能、施工環境、認定、取合いで選びます。
オリジナル確認問題4問
以下は公式問題を転載せず、本記事用に作成したオリジナル問題です。
問題1:鋼板のせん断切断について、令和7年版仕様書に合うものはどれですか。
①板厚に関係なく可能 ②13mm以下でも主要部材の溶接接合部に使える ③13mm以下で条件付き使用 ④16mm以下なら自由に使用
問題2:一般の高力ボルト摩擦接合の本締め順序として適切なものはどれですか。
①周辺から中央 ②中央から周辺 ③長いボルトから ④任意
問題3:作業場所の気温が-3℃のときの溶接として適切なものはどれですか。
①無条件で施工 ②必ず中止 ③溶接線から100mm程度を適切に加熱 ④母材へ散水
問題4:柱を現場溶接接合するとき、エレクションピースの仮ボルトとして適切なものはどれですか。
①普通ボルトを1本 ②普通ボルトを1/3 ③高力ボルトを1/2 ④高力ボルトを全数
公式資料と更新方針
- 建設業振興基金「令和8年度 1級建築 第一次検定問題(午前)」:No.28の加工・組立条件を確認
- 令和8年度 第一次検定正答肢・配点:No.28の正答①と各1点を確認
- 令和8年度問題・正答肢の公式案内:午前・午後・正答の入口
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」:7章の工作、高力ボルト、溶接、建方、耐火被覆を確認
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」:現行版と修正情報の入口
- 国土交通省「官庁営繕の技術基準」:技術基準の更新状況を確認
本記事は2026年7月31日時点の公表資料に基づきます。令和9年度問題、JIS、JASS 6、公共建築工事標準仕様書の改定時に再確認します。
まとめ
- 令和8年度No.28の正答は①。せん断切断は板厚13mm以下でも使用箇所に条件があります。
- 高力ボルトは摩擦面、セット、締付け、回転・余長まで一連で確認します。
- 溶接は着手前・作業中・完了後の記録で欠陥の予防と検出を行います。
- 仮ボルトは一般1/3、混用・併用1/2、現場溶接のエレクションピースは高力ボルト全数です。
- 耐火被覆は認定仕様と取合いを完成させ、防錆塗装・摩擦面・溶接面を分けます。
鋼材の性質は「1級建築の建築材料②」、S・RC・SRCの構造は「1級建築の各種構造①」、コンクリートとの取合いは「1級建築のコンクリート工事」で復習できます。全体の選択順は「1級建築 第一次検定の出題構成と攻略法」を参照してください。
最後の自己点検
「13」「0.45と0.4」「一次→マーク→本締め」「-5と5」「1/3・1/2・全数」を、加工・摩擦面・締付け・溶接気温・仮ボルトへ正しく割り当てられれば、鉄骨工事の主要判断を整理できています。