2級電気工事(第一次)

【2級電気工事】電車線(架空電車線・第三軌条方式)をわかりやすく解説

電車線(架空電車線・第三軌条方式)の要点(30秒でわかる)

  • 架空電車線方式:パンタグラフで架線から集電。直流1,500V(在来線)、交流25,000V(新幹線)
  • 第三軌条方式:レール横の給電レールから集電。地下鉄で多い(直流750V等)
  • 帰線:レールが帰り道(帰線)→レールの電気抵抗を下げるためボンドを設置
  • 出題傾向:電圧値(直流1,500V・交流25,000V等)と方式の特徴が頻出

結論から言います。電車線は鉄道に電気を供給する設備を学ぶ分野です。鉄道業界以外の人にはなじみが薄いため、選択問題で「捨てる」受験者が多い分野ですが、鉄道関連の電気工事に携わる方にとっては確実な得点源になります。

電車が走るためにはレールの上を走るだけでなく、電気を供給する仕組みが必要です。この記事では、架空電車線方式と第三軌条方式の2大方式を中心に解説します。

この分野を選ぶべき? — 受験者タイプ別ガイド

2級電気工事の第一次検定は64問中40問を選択して解答します。電車線はNo.16〜32の選択科目から出題されるため、選ぶかどうかは自分の得意分野しだいです。

  • 選ぶべき人:鉄道会社・鉄道関連の電気工事会社で働いている方。日頃から架線やき電設備に触れている人には「常識問題」になります
  • 捨ててもOKな人:建築電気工事がメインの方。構内電気設備や電力系統で十分にカバーできます

選択問題の戦略の詳細は「選択問題の戦略」をご覧ください。

電車線の基本|電車への電力供給の仕組み

電車が動くためにはモーター(電動機)に電気を供給する必要があります。でも家庭のように「コンセントにプラグを差す」わけにはいきません。走りながら電気を受け取る仕組みが「電車線」です。

日常のたとえで言うと、架空電車線方式は「スマホの充電ケーブルをつなぎっぱなしで移動するイメージ」。上から垂れた線に常に接触しながら走ります。一方、第三軌条方式は「床に敷いた充電パッドの上をスライドするイメージ」。横から電気をもらいます。

電気を供給する方式は大きく2つあります。

方式 特徴
架空電車線方式 線路の上に張った電線(架線)から、パンタグラフで集電する。JR・私鉄の大部分
第三軌条方式 線路脇に敷設した給電レール(第三軌条)から集電靴で集電する。地下鉄に多い

出題傾向(2級電気工事 第一次検定)

電車線はNo.16〜32の選択科目から出題されます。出題頻度は低めですが、架空電車線の構成と第三軌条方式の違いがポイント。鉄道関連の仕事をしている方は得点源にできます。全体の攻略は「第一次検定の出題傾向と攻略法」をご覧ください。

なぜ電車線が電気工事施工管理の試験に出るのか?

鉄道の電気設備工事は電気工事施工管理技士の業務範囲に含まれます。架線の張替え工事、き電線の敷設、変電所の改修など、鉄道インフラの電気工事は高圧・特別高圧を扱うため、施工管理者の役割が重要です。ただし鉄道関係以外の方は「選択問題の戦略」でこの分野を避けることも可能です。

架空電車線方式|パンタグラフと架線の仕組み【頻出】

基本構成 — 架線はこうなっている

電車の屋根についている菱形の装置——パンタグラフが上に伸びて架線(トロリ線)に接触し、電気を集めます。

架空電車線方式のしくみを、上から順に見てみましょう。

架空電車線の構成(上から順に)
支持物(電柱)
架線全体を支える柱。コンクリート柱や鋼管柱
ちょう架線
トロリ線を一定の高さに吊るす支持線(メッセンジャーワイヤー)
ハンガで吊り下げ
トロリ線
パンタグラフと直接接触する電線。硬銅線やすずめっき銅線を使用
ばねの力で押し付け
パンタグラフ
電車の屋根に取り付けた集電装置。菱形やシングルアーム型

なぜちょう架線が必要なのか?――トロリ線を直接電柱に張ると、自重でたわんで高さがバラバラになります。パンタグラフは一定の高さで接触しないと離線(電気が途切れる)してしまう。ちょう架線はトロリ線を水平に保つための「吊り糸」の役割です。

架線の種類

方式 特徴
シンプルカテナリ 最も基本的な方式。ちょう架線1本+トロリ線1本。JR在来線・私鉄の標準
コンパウンドカテナリ 補助ちょう架線を追加。高速走行に対応。新幹線に採用
剛体ちょう架方式 金属製のレール(剛体)にトロリ線を取り付け。地下鉄のトンネル内で使用

覚え方のコツ

「シンプル → コンパウンド → 剛体」は「普通 → 高速 → トンネル内」と覚えましょう。速度が上がるほど架線の構成が複雑になり、トンネル内では天井が近いので柔らかい線ではなく硬い棒(剛体)を使います。

試験のポイント:新幹線のような高速鉄道では、パンタグラフが架線から離れる「離線」を防ぐためにコンパウンドカテナリ方式で架線の張力を均一にしています。時速300km超で走行中に離線すると、アーク(火花)が発生して架線が損傷するためです。

き電方式

変電所から架線に電力を供給する方式を「き電方式」と呼びます。

方式 電圧・特徴
直流き電 DC 1,500V(JR在来線)/ DC 750V(地下鉄)。変電所の間隔が短い
交流き電 AC 25,000V(新幹線・JR一部区間)。高電圧のため変電所間隔を長くできる

直流と交流の使い分けは「距離と効率」がポイント。在来線や地下鉄は駅間が短いので直流で十分。新幹線のように長距離を高速で走る場合は、電圧を高くして送電ロスを減らせる交流が有利です。

なぜ直流は変電所間隔が短いのか?――直流は電圧が低い(1,500V)ため、長い距離を送電すると電圧降下が大きくなります。これは電気理論の「V=IR」そのもの。電線の抵抗R×電流Iで電圧が落ちるので、短い間隔で変電所を置いて電圧を維持する必要があるのです。電気理論の基本については「電気理論」の記事も参考にしてください。

第三軌条方式|地下鉄の給電方式

線路脇に敷設した給電用のレール(第三軌条)から、車両の側面または床下についた集電靴(しゅうでんか)で電気を集める方式です。

第三軌条方式の特徴

  • 架線が不要なのでトンネル断面を小さくできる(建設コスト削減)
  • 電圧はDC 750V程度(架空方式より低い)
  • 感電防止のため、給電レールにカバーを設置
  • 踏切のある路線には不向き(歩行者が第三軌条に触れる危険)

東京メトロの銀座線・丸ノ内線、大阪メトロの御堂筋線などが第三軌条方式を採用しています。地下鉄ホームで線路を見ると、通常の2本のレールの脇にもう1本、カバーのかかったレールがあるのを見たことがあるかもしれません。それが第三軌条です。

なぜ地下鉄は第三軌条を選ぶのか?――最大の理由はトンネルの大きさ。架空電車線方式はパンタグラフの上に架線を張るスペースが必要なので、トンネルの断面が大きくなります。地下鉄は地中を掘るため、断面が大きい=建設費が膨大。第三軌条なら架線スペース不要でトンネルを1〜2m低くできるため、建設コストを大幅に抑えられます。

帰線の役割|レールが電気の帰り道

電気は「行き」と「帰り」がセット。架線(または第三軌条)が「行き」の電線なら、「帰り」は走行用のレールが担っています。電車が使った電気はレールを通じて変電所に戻ります。

このため、レールには電気的な接続(ボンド)が必要で、レール同士の継ぎ目にボンド線を取り付けて電気の流れを確保します。これをレールボンドと呼びます。

レールボンドが劣化・断線すると帰線電流がレールから大地に漏れ出し、「迷走電流」となって近くの水道管やガス管を腐食させる原因になります。鉄道の電気設備が周辺のインフラに影響するという意外な一面です。

よくある質問と試験のひっかけポイント

こう間違える人が多い!

  • 「トロリ線とちょう架線を混同」 → トロリ線はパンタグラフが直接触れる線。ちょう架線はトロリ線を吊る線。役割が全く違います
  • 「第三軌条方式=高架鉄道」と思い込む → 正しくは地下鉄に多い方式。トンネル断面を小さくできるのがメリット
  • 「き電方式の電圧を逆に覚える」 → 直流は低い(1,500V/750V)、交流は高い(25,000V)。「直流=近距離・低圧」「交流=長距離・高圧」とセットで覚える
  • 「剛体ちょう架とカテナリちょう架の違いがわからない」 → 剛体は金属の棒、カテナリは柔らかいワイヤー。トンネルの天井が近い場所で剛体を使う

よくある質問と試験のひっかけポイント

Q. 在来線と新幹線で方式が違うのはなぜ?

A. 新幹線は高速走行で大電力が必要なため交流25,000Vを使用。交流は変圧が容易で長距離送電に適しています。在来線は直流1,500Vが主流で、変電所間隔が短い(約5〜10km)のが特徴です。

Q. 第三軌条方式の利点は?

A. 架線が不要なためトンネル断面を小さくでき、地下鉄の建設コスト削減に有利。ただし感電の危険があるため駅ホームの安全対策(ホームドア等)が重要です。

Q. き電線とは?

A. 変電所から架線(トロリ線)に電力を供給する電力線です。架線だけでは電圧降下が大きくなるため、き電線で補助します。

試験でこう出る!出題パターン

  • パターン1:架空電車線と第三軌条方式の特徴比較
  • パターン2:電圧値(直流1,500V・交流25,000V・直流750V等)
  • パターン3:カテナリちょう架方式の構造
  • パターン4:帰線(レール)の役割とボンドの目的

暗記のコツ

項目 ポイント
在来線 直流1,500V+架空電車線
新幹線 交流25,000V+架空電車線
地下鉄 直流750V前後+第三軌条方式が多い
帰線 レール=電気の帰り道→ボンドで抵抗低減

この分野の知識をミニテストで確認

解説記事の内容がそのまま出題されるので復習に最適です。

攻略法・ミニテスト一覧を見る →

理解度チェック(四肢択一)

2級電気工事の第一次検定と同じ四肢択一形式です。

【問1】 架空電車線方式において、ちょう架線の役割として正しいものはどれか。

(1)電車のモーターに直接電力を供給する
(2)パンタグラフと直接接触して集電する
(3)トロリ線を一定の高さに支持する
(4)変電所から架線に電力を送る

解答を見る

正解:(3)
ちょう架線はトロリ線を一定の高さに吊り下げるための支持線です。(1)はモーターへの給電回路、(2)はトロリ線の役割、(4)はき電線の役割です。

【問2】 新幹線で採用されている架線方式として最も適当なものはどれか。

(1)シンプルカテナリ方式
(2)コンパウンドカテナリ方式
(3)剛体ちょう架方式
(4)第三軌条方式

解答を見る

正解:(2)
新幹線は高速走行時の離線を防ぐためコンパウンドカテナリ方式を採用しています。補助ちょう架線を追加して架線の張力を均一にし、時速300km超でも安定した集電を実現します。

【問3】 第三軌条方式に関する記述として誤っているものはどれか。

(1)地下鉄の路線で多く採用されている
(2)架線が不要なのでトンネル断面を小さくできる
(3)給電レールの電圧はAC 25,000Vである
(4)集電靴により電力を供給される

解答を見る

正解:(3)
第三軌条方式の電圧はDC 750V程度です。AC 25,000Vは新幹線の交流き電方式の電圧。第三軌条は直流・低電圧で運用されます。

【問4】 帰線に関する記述として正しいものはどれか。

(1)帰線には専用の電線を架線と並行して張る
(2)走行用レールが帰線の役割を兼ねている
(3)帰線は直流き電方式にのみ存在する
(4)レールボンドは走行時の振動を吸収する装置である

解答を見る

正解:(2)
電車が使った電気はレールを通じて変電所に戻ります。(1)帰線に専用電線は不要でレールが兼ねます。(3)交流き電方式にも帰線は存在します。(4)レールボンドはレール継ぎ目の電気的接続を確保する金具です。

まとめ|電車線の方式と電圧値を正確に暗記

この記事のポイント

  • 架空電車線方式:架線+パンタグラフ。支持物→ちょう架線→トロリ線→パンタグラフの順
  • 第三軌条方式:給電レール+集電靴。地下鉄に多い(トンネル断面を小さくできる)
  • き電方式:直流(在来線1,500V / 地下鉄750V)と交流(新幹線25,000V)
  • 架線の種類:シンプルカテナリ(一般)、コンパウンド(高速)、剛体(トンネル内)
  • 帰線=レールが電気の帰り道。レールボンドで電気的接続を確保
  • 鉄道関係以外の方は選択問題で回避可能。鉄道関係者は確実に得点できる分野

鉄道業界以外の方は、この分野を「選択問題の戦略」に基づいて捨てる判断もアリです。逆に鉄道関連の方は確実に得点できる分野なので、ここでしっかり点を稼ぎましょう。

ミニテストで知識を確認しよう

電車線・関連分野の知識をミニテストで確認しましょう。

本番形式で力試しするなら模擬試験もどうぞ。

もっと問題を解きたい方は「おすすめテキスト・参考書」で演習しましょう。

関連記事

-2級電気工事(第一次)