鉄骨工事のポイント(30秒で押さえる)
- 高力ボルト:トルシア形(S10T)が主流。締付け後のピンテール破断で管理。1次締め→マーキング→本締め
- 溶接:完全溶込み溶接・隅肉溶接の違い。溶接欠陥(ブローホール・アンダーカット等)の種類
- 建方:建方精度の管理値と仮ボルト・ワイヤロープによる倒壊防止
- 耐火被覆:鋼材は約550℃で強度半減。吹付け・巻付け・成型板等の方法
- 出題頻度:毎年2〜3問。高力ボルトの締付け手順と溶接欠陥は最頻出
鉄骨工事は1級建築施工管理技士の第一次検定で毎年複数問出題される最重要テーマの一つです。S造・SRC造の建物で監理技術者を務めるには、高力ボルトの締付け管理や溶接の品質管理の知識が不可欠です。
鋼材の材料としての性質は「建築材料②」で解説しています。
高力ボルト接合
高力ボルトの種類
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| トルシア形高力ボルト(S10T) | 最も広く使用。ボルト頭部にピンテールがあり、所定のトルクで破断する。締付けトルクの管理が容易 |
| JIS形高力ボルト(F10T) | トルクレンチで締め付ける。トルシア形が使えない場合に使用 |
| 溶融亜鉛めっき高力ボルト(F8T) | 屋外の鉄骨に使用。めっきによる防錆処理。強度はF10Tより低い |
高力ボルトの締付け手順(最頻出)
締付けの3ステップ
締付け管理のポイント
- 締付け順序:ボルト群の中央から外側に向かって締める(偏心を防ぐため)
- 1次締め→本締めは同日中に完了させるのが原則
- 共回り:ナットと座金が一緒に回ってしまう現象。マーキングのずれで確認できる。共回りが発生したボルトは新しいボルトセットに交換して再締付け
- すべり係数:接合面の摩擦係数。0.45以上を確保する。赤錆・黒皮処理面などの摩擦面処理が必要
高力ボルトの保管
高力ボルトは乾燥した場所で保管し、包装の開封は施工当日に行うのが原則。湿気や雨にさらされるとボルトの摩擦係数が変化し、適切なトルク管理ができなくなります。「開封後に雨に濡れたボルトをそのまま使用した」は不適切です。
溶接
溶接の種類
| 種類 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| 完全溶込み溶接 | 母材の全断面を溶接金属で接合。母材と同等以上の強度が得られる | 柱と梁の接合部(仕口)。主要構造部に使用 |
| 隅肉溶接 | 部材のすみ(角)に三角形の断面で溶接。完全溶込みより施工が容易 | スチフナー・ガセットプレートの取付けなど。二次部材の接合に多用 |
| 部分溶込み溶接 | 母材の一部の断面のみ溶接。完全溶込みと隅肉の中間的な位置付け | 完全溶込みが不要で隅肉では不足する部位 |
溶接方法
建築鉄骨で使う溶接方法
- 被覆アーク溶接:溶接棒の被覆剤でアークとプールを保護。手動で行う。少量・補修向き
- 半自動溶接(CO₂ガスシールドアーク溶接):CO₂ガスで溶接部をシールド。ワイヤを自動送給。現場溶接で最も多く使用
- サブマージアーク溶接:フラックス(粉末)の中でアーク。自動溶接。工場の長い直線溶接に使用。下向き姿勢専用
- エレクトロスラグ溶接:柱の現場継手に使用。立向き溶接で上向きに一気に溶接。1パスで全断面溶接が可能
溶接欠陥の種類(1級頻出)
| 欠陥名 | 内容 |
|---|---|
| ブローホール | 溶接金属内部にガスの気泡が残留した球状の空洞 |
| スラグ巻込み | スラグ(不純物)が溶接金属内に閉じ込められた欠陥 |
| アンダーカット | 溶接ビードの止端部で母材がえぐれて溝状になった欠陥。応力集中の原因 |
| オーバーラップ | 溶接金属が母材の上に覆いかぶさって融合していない状態 |
| 融合不良 | 溶接金属と母材が十分に融け合っていない欠陥 |
| 溶込み不良 | 開先の底部まで溶接金属が到達していない欠陥。完全溶込み溶接で問題となる |
| 割れ | 最も重大な欠陥。低温割れ(遅れ割れ)と高温割れがある |
溶接部の検査方法
- 外観検査:全数。アンダーカット・オーバーラップ・ビード外観を目視確認
- 超音波探傷検査(UT):内部欠陥を検出。完全溶込み溶接に対して実施。最も一般的な非破壊検査
- 放射線透過検査(RT):X線やγ線で内部欠陥をフィルムに撮影。欠陥の形状がわかりやすい
- 磁粉探傷検査(MT):表面・表層の割れを検出。強磁性体にのみ適用可能
- 浸透探傷検査(PT):表面の割れを検出。材質を問わず適用可能
鉄骨の建方
建方の手順
- アンカーボルトの設置確認:位置・レベル・出(突出長さ)を確認
- 柱の建込み:クレーンで吊り込み、アンカーボルトに固定
- 仮ボルト・ワイヤロープで固定:本締め前の仮固定。倒壊防止が目的
- 梁の取付け:柱に梁を接合して架構を形成
- 建入れ直し:柱の鉛直度を調整。ターンバックル付き筋かい等で調整
- 本締め・溶接:高力ボルトの本締めと現場溶接を行い、接合を完了
建方精度の管理値
| 項目 | 管理許容差 |
|---|---|
| 柱の倒れ | 柱1節の高さの1/1000以下、かつ10mm以下 |
| 建物全体の倒れ | 高さの1/2500以下、かつ25mm以下(高さ20m以下) |
| 柱の据付け位置のずれ | 5mm以下 |
仮ボルトの本数
仮ボルトの最低本数
高力ボルト接合の場合、仮ボルトはボルト1群のボルト数の1/3以上、かつ2本以上。溶接接合の場合はボルト1群のボルト数の1/2以上、かつ2本以上。溶接接合のほうが仮ボルトの本数が多いのは、溶接による変形・収縮に抵抗するためです。
耐火被覆
鋼材は約550℃で強度が半減するため、火災時の鋼材温度上昇を防ぐ耐火被覆が必要です。
| 工法 | 材料 | 特徴 |
|---|---|---|
| 吹付け工法 | ロックウール・セメント系材料 | 施工が速い。コスト低い。複雑な形状に対応可能。ただし粉じんが発生し仕上げが粗い |
| 巻付け工法 | セラミックファイバーブランケット | 鋼材に巻き付ける。粉じんが少ない。乾式で湿気の影響を受けにくい |
| 成型板張り工法 | けい酸カルシウム板等 | 仕上がりが綺麗。そのまま仕上げ面にできる。コストはやや高い |
| 耐火塗料 | 発泡型耐火塗料 | 火災時に塗膜が発泡・膨張して断熱層を形成。鉄骨の意匠を活かせる。コスト高い |
よくある間違い・ひっかけポイント
ひっかけ1: 高力ボルトの締付け順序
「ボルト群の外側から中央に向かって締め付ける」→ 不正解。正しくは中央から外側に向かって締めます。外側から締めると内側の部材が浮き上がって密着不良が生じるおそれがあります。
ひっかけ2: サブマージアーク溶接の姿勢
「サブマージアーク溶接は立向き溶接に適する」→ 不正解。サブマージアーク溶接はフラックスの中でアークするため、下向き姿勢専用です。立向きではフラックスが落下してしまいます。立向き溶接に使うのはエレクトロスラグ溶接です。
ひっかけ3: 仮ボルトの本数
高力ボルト接合は1/3以上、溶接接合は1/2以上。「溶接接合の仮ボルトは1/3以上でよい」は不正解。溶接接合は溶接変形に抵抗するため、高力ボルト接合より多い仮ボルトが必要です。
理解度チェック
【問題1】高力ボルトの締付けに関する記述として、正しいものはどれですか?
(1)ボルト群の外側から中央に向かって締め付ける
(2)トルシア形高力ボルトはピンテールの破断で締付け完了を確認する
(3)共回りが発生したボルトはそのまま使用してよい
(4)1次締め後の本締めは翌日以降に行うのが原則である
【問題2】溶接欠陥に関する記述として、正しいものはどれですか?
(1)ブローホールは溶接ビードの表面にできる溝状の欠陥である
(2)アンダーカットはビードの止端部で母材がえぐれた欠陥である
(3)オーバーラップは溶接金属内部のガスの気泡である
(4)スラグ巻込みは母材表面の割れである
【問題3】鉄骨工事に関する記述として、誤っているものはどれですか?
(1)完全溶込み溶接は母材と同等以上の強度が得られる
(2)柱の建入れ直しにはターンバックル付き筋かいを使用する
(3)サブマージアーク溶接は立向き姿勢で行うことができる
(4)耐火被覆は鋼材の温度上昇を防ぐために行う
まとめ
この記事のポイント
- トルシア形(S10T)が最も使用される高力ボルト。ピンテール破断で締付け完了
- 締付け手順:1次締め→マーキング→本締め。中央から外側に締める
- 完全溶込み溶接:主要構造部。母材同等以上の強度。超音波探傷検査で内部確認
- 溶接欠陥:ブローホール(気泡)・アンダーカット(えぐれ)・割れ(最も重大)を区別
- 建方精度:柱の倒れ1/1000以下かつ10mm以下
- 仮ボルト:高力ボルト接合=1/3以上、溶接接合=1/2以上
- 耐火被覆:吹付け(速い・安い)、成型板(綺麗)、耐火塗料(意匠性)