1級建築(第一次)

1級建築 構造力学(静定・不静定の解法)【第一次検定の科目別解説】

構造力学のポイント(30秒で押さえる)

  • 反力の計算:力のつり合い(ΣX=0, ΣY=0, ΣM=0)で求める。これが全ての基本
  • 断面力:軸方向力(N)・せん断力(Q)・曲げモーメント(M)の3種類
  • 静定構造物:つり合い条件だけで解ける。単純梁・片持梁・静定ラーメンなど
  • 不静定構造物:つり合い条件だけでは解けない。1級で新たに出題される分野
  • 出題頻度:毎年2〜3問。計算問題は配点が高いので確実に得点したい

構造力学は1級建築施工管理技士の第一次検定で毎年出題される重要分野です。2級では単純梁の反力計算が中心でしたが、1級では不静定構造物の概念やトラスの解法も加わります。

計算問題に苦手意識を持つ人は多いですが、解き方のパターンは決まっています。この記事で基本ルールを身につければ、試験本番で確実に得点できるようになります。

構造力学の基本 — 支点と荷重

支点の種類と反力

まず「支点」の種類を正確に覚えましょう。支点の種類によって発生する反力の数が決まります。

支点の種類 記号 反力の数と方向
ローラー支点(移動支点) △に○ 1つ:支承面に垂直な方向のみ(水平方向は自由)
ピン支点(回転支点) 2つ:鉛直方向+水平方向(回転は自由)
固定支点(固定端) 壁に埋込み 3つ:鉛直方向+水平方向+モーメント(全て拘束)

反力の数の覚え方

ローラー(1つ)→ ピン(2つ)→ 固定(3つ)と、自由度を制約する方向が1つずつ増えると考えると覚えやすい。ローラーは滑れるので水平方向は自由。ピンは回転だけ自由。固定は全て拘束。

荷重の種類

  • 集中荷重:1点に作用する荷重。単位は kN
  • 等分布荷重:部材の一定区間に均等に作用する荷重。単位は kN/m
  • 等変分布荷重(三角荷重):0から一定値まで直線的に変化する荷重
  • モーメント荷重:回転力として作用する荷重。単位は kN・m

等分布荷重の計算では、合力 = 荷重強度 × 区間長さで集中荷重に置き換え、作用位置は区間の中央にあるとして計算します。三角荷重の合力は荷重強度 × 区間長さ × 1/2で、作用位置は底辺から1/3の位置です。

静定構造物の解き方

静定・不静定の判定

構造物が「静定」かどうかは、反力の数と つり合い条件式の数の関係で決まります。

静定・不静定の判定基準

  • 平面構造のつり合い条件式は3つ(ΣX=0, ΣY=0, ΣM=0)
  • ヒンジ(内部ヒンジ)が1つあると条件式が+1される
  • 反力の数 = 条件式の数静定(つり合い条件だけで解ける)
  • 反力の数 > 条件式の数不静定(変形の条件も必要)
  • 反力の数 < 条件式の数不安定(構造物として成立しない)

たとえば、単純梁(ピン支点+ローラー支点)の反力は2+1=3つ。つり合い条件式も3つ。よって静定です。

片持梁(固定支点のみ)の反力は3つ。つり合い条件式も3つ。これも静定です。

一方、両端固定梁の反力は3+3=6つ。つり合い条件式は3つ。6>3なので3次の不静定です。

反力の求め方(つり合い条件)

静定構造物の反力は、次の3つの条件式を立てて求めます。

つり合い条件式

  • ΣX = 0(水平方向の力の合計=0)
  • ΣY = 0(鉛直方向の力の合計=0)
  • ΣM = 0(任意の点まわりのモーメントの合計=0)

例題:単純梁の反力計算

スパン6mの単純梁(左端A:ピン支点、右端B:ローラー支点)に、Aから2mの点Cに集中荷重12kNが作用しているとき、A点・B点の反力を求めよ。

解法:

  1. ΣM(A)=0 → RB×6 - 12×2 = 0 → RB = 4kN
  2. ΣY=0 → RA + RB - 12 = 0 → RA = 12 - 4 → RA = 8kN
  3. 検算:ΣM(B)=0 → RA×6 - 12×(6-2) = 8×6 - 12×4 = 48 - 48 = 0 ✓

コツ:モーメントの式は未知の反力が1つだけ含まれる点を支点にすると、1つの式で1つの反力が求まります。

断面力の種類と符号

部材の任意の断面に作用する力を断面力といいます。3種類あります。

断面力 記号 意味 正の向き
軸方向力 N 部材軸方向の引張・圧縮力 引張が正
せん断力 Q 部材を切断する方向の力 左側が上向きのとき正
曲げモーメント M 部材を曲げようとする力 下側に凸(引張側)が正

よく出る梁の断面力の公式

以下の公式は暗記しておくと計算が速くなります。

条件 最大曲げモーメント 位置
単純梁・中央集中荷重P PL/4 スパン中央
単純梁・等分布荷重w wL²/8 スパン中央
片持梁・先端集中荷重P PL 固定端
片持梁・等分布荷重w wL²/2 固定端

暗記のコツ

単純梁の等分布荷重:wL²/8。片持梁の等分布荷重:wL²/2。同じ荷重・同じスパンなら、片持梁のほうが曲げモーメントが4倍大きい(8→2)。片持梁は片方しか支えがないから大きい、とイメージすると忘れにくい。

トラスの解法

トラスは部材の両端がピン接合された三角形の集合体で、部材には軸方向力(引張or圧縮)のみが作用します。1級では節点法を使った解法が出題されます。

節点法の手順

節点法の解き方

  1. まず反力を求める(通常のつり合い条件で)
  2. 未知部材力が2つ以下の節点を選ぶ
  3. その節点でΣX=0, ΣY=0を立てて部材力を求める
  4. 求まった部材力を使って、次の節点へ進む

重要:トラスの部材には曲げモーメントは生じない(両端ピン接合だから)。引張か圧縮のどちらかだけです。

ゼロメンバーの見つけ方

試験では力が作用しない部材(ゼロメンバー)を見つける問題も出ます。以下のルールを覚えておくと瞬時に判定できます。

ゼロメンバーの判定ルール

  • ルール1:ある節点に2本の部材だけが接合し、その節点に外力が作用しない場合 → 両方の部材がゼロメンバー
  • ルール2:ある節点に2本の部材が一直線上にあり、もう1本が角度を持って接合し、その節点に外力がない場合 → 角度を持つ部材がゼロメンバー

不静定構造物の基本(1級の追加範囲)

1級では不静定構造物に関する定性的な理解が問われます。複雑な計算は出ませんが、以下のポイントは確実に押さえましょう。

不静定構造物とは

静定と不静定の比較

項目 静定構造物 不静定構造物
解き方 つり合い条件のみ つり合い+変形条件
温度変化の影響 応力は生じない 応力が生じる
支点沈下の影響 応力は生じない 応力が生じる
荷重による変形 比較的大きい 小さい(剛性が高い)
部材の破壊時 即座に崩壊 他の部材に力を再分配
代表例 単純梁・片持梁 連続梁・両端固定梁・ラーメン

1級で最も問われるポイント

不静定構造物では温度変化や支点沈下によって応力が生じるのに対し、静定構造物では生じません。この違いは毎年のように出題されます。不静定構造物は拘束が多い分、自由に変形できないため、温度変化や支点沈下があると内部に応力が発生してしまうのです。

不静定次数の求め方

不静定次数は反力の数 − つり合い条件式の数で求めます。

  • 両端固定梁:反力6つ − 条件式3つ = 3次不静定
  • 一端固定・他端ピン:反力5つ − 条件式3つ = 2次不静定
  • 連続梁(3スパン・両端ピン):内部支点2つ(各2反力)+端部支点2つ(ピン2+ローラー1=3反力)= 反力7つ − 条件式3つ = 4次不静定

たわみとたわみ角

1級ではたわみの大小比較が問われます。以下の公式を押さえましょう。

条件 最大たわみ
単純梁・中央集中荷重P PL³/48EI
単純梁・等分布荷重w 5wL⁴/384EI
片持梁・先端集中荷重P PL³/3EI
片持梁・等分布荷重w wL⁴/8EI

たわみを小さくする方法

すべての公式の分母にEI(曲げ剛性)があることに注目。E(ヤング係数)を大きくする=硬い材料に変える。I(断面二次モーメント)を大きくする=断面を大きくする。また、スパンLは3乗や4乗で効くので、スパンを短くするのが最も効果的です。

よくある間違い・ひっかけポイント

ひっかけ1: 不静定構造物と温度変化

「静定構造物は温度変化で応力が生じる」→ 不正解。静定構造物は拘束が少ないため、温度変化があっても自由に伸縮でき、応力は生じません。温度変化で応力が生じるのは不静定構造物です。

ひっかけ2: トラス部材の曲げモーメント

「トラスの部材には曲げモーメントが生じる」→ 不正解。トラスの部材は両端がピン接合なので、曲げモーメントは生じません。作用するのは軸方向力(引張 or 圧縮)のみです。

ひっかけ3: たわみとスパンの関係

たわみの公式でスパンLは3乗や4乗に比例します。「スパンが2倍になるとたわみは2倍」は不正解。集中荷重の単純梁なら2³=8倍、等分布荷重なら2⁴=16倍になります。スパンの影響は非常に大きい。

理解度チェック

【問題1】スパン8mの単純梁(左端A:ピン支点、右端B:ローラー支点)に、中央に集中荷重16kNが作用するとき、A点の鉛直反力RAはいくらですか?

(1)4kN (2)8kN (3)12kN (4)16kN

解答を見る

正解:(2)8kN
中央に集中荷重が作用する単純梁は、左右の反力が等しくなります。ΣM(A)=0より RB×8 - 16×4 = 0 → RB = 8kN。ΣY=0より RA + 8 - 16 = 0 → RA = 8kN。中央集中荷重では左右均等に分配されます。

【問題2】不静定構造物に関する記述として、正しいものはどれですか?

(1)つり合い条件式だけで反力を求めることができる
(2)温度変化によって応力は生じない
(3)支点沈下によって応力が生じる
(4)1つの部材が破壊すると直ちに崩壊する

解答を見る

正解:(3)支点沈下によって応力が生じる
不静定構造物は拘束が多く自由に変形できないため、支点沈下や温度変化で応力が生じます。(1)つり合い条件だけでは解けない(変形条件も必要)。(2)温度変化でも応力が生じる。(4)部材が破壊しても他の部材に力を再分配できるため、直ちには崩壊しにくい。

【問題3】スパンLの単純梁に等分布荷重wが作用するとき、梁中央の最大曲げモーメントはどれですか?

(1)wL/4 (2)wL²/4 (3)wL²/8 (4)wL²/2

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正解:(3)wL²/8
単純梁に等分布荷重が作用する場合の最大曲げモーメントはスパン中央でwL²/8です。(4)wL²/2は片持梁の等分布荷重の場合の最大曲げモーメント。この2つの公式は混同しやすいので、単純梁は/8、片持梁は/2と正確に覚えましょう。

まとめ

この記事のポイント

  • 支点の反力数:ローラー1・ピン2・固定3。反力数と条件式数の比較で静定・不静定を判定
  • 反力の計算:ΣX=0, ΣY=0, ΣM=0のつり合い3条件で求める
  • 頻出公式:単純梁中央集中=PL/4、等分布=wL²/8。片持梁先端集中=PL、等分布=wL²/2
  • トラス:部材に作用するのは軸方向力のみ。曲げモーメントは生じない
  • 不静定の特徴:温度変化・支点沈下で応力が生じる(静定では生じない)
  • たわみ:EI(曲げ剛性)が大きいほど小さい。スパンLの影響が最も大きい

1級建築 第一次検定の科目別対策

各種構造や建築材料の知識も合わせて学習しましょう。

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